Interview
父が美術の教員をしていた影響で、幼い頃から工作が好きだったんです。それで将来は美術の仕事、なかでもインテリアデザイナーになれたら……と考え、芸大に入学しました。3年生の頃、陶芸と染色、どちらかを選ぶ機会があり、悩んだ結果陶芸を選んだ。そこで、白磁と出合うわけです。絵が描かれているわけでもないのに堂々とした存在感を放つ白磁は、私が生まれ育った山陰の雪景色にも似て、すぐに虜になりました。最初はろくろをまともに回せなかった。それでも、「今日はこれだけ上達できた。明日はもっと上手くできるかもしれない」という思いを積み重ねながら、卒業するまで毎日制作に励んでいました。白磁の魅力に取り憑かれていたような感覚ですね。
まともに陶器をつくれるようになった頃には卒業を迎え、その後は“1年だけ白磁つくりに専念してみよう”と実家に戻り創作活動を開始。納屋を片付けてろくろを設置し、ただひたすら白磁と向き合っていました。いつまでも実家に甘えられない……というプレッシャーを感じながらの、土俵際の創作活動でしたね。当時を思い返すと、無謀だったと感じますが、それでも諦めずに続けられたのは、大学時代に先生に言われた「生まれたからには、その証しを残すんだ!」という言葉のおかげだと思います。
卒業後はひたすら自己流で制作していました。基礎をもっと学んだほうがいいという思いもありましたが、習いすぎないことで自分の個性を追求できたことが、今となってはいい結果につながったのかもしれません。日本陶芸展で入選し、さらに地元の方たちに励ましてももらえた。“あと1年だけ”という思いを何度も重ねながら、ようやく36歳のときに日本陶芸展で優秀賞をいただくことができたのです。この受賞をきっかけに“これで一生続けていけるかもしれない”という思いが芽生え、現在までの活動につながっています。
私は生まれ育った山陰の地で創作活動を続けていますが、山陰の柔らかい太陽の光、そして冬に積もる真っ白な雪は、私の作品に大きな影響を与えています。モダンな形やしっとりとした質感……。誰が見ても私の作品だとわかってもらえるよう、個性を追求していくことこそが、私のやるべきこと。つまり、学生時代に先生に言われた“生きた証を残す”。これを実践しているわけです。
芸術の世界は厳しいものです。大学で学んでも、そこから先はひとりの力でやっていかなくてはなりません。私自身も挫折を経験し、自分の力のなさに愕然としたこともありました。しかし学生時代の先生の言葉を胸に自分の可能性へ挑み続け、現在では光栄なことに重要無形文化財に認定していただきました。その道のりへのスタート地点は大阪芸大であり、ここで学んだ創作への意欲こそが、私の心の支えとなっています。みなさんも、このすばらしい環境のなかで創作活動の喜びをぜひ感じてみてください。