本サイトはInternet Explorerには対応しておりません。Chrome または Edge などのブラウザでご覧ください。
Topics

AMSLの活動2022/23─学生たちが国内外でプロの制作現場に参加 AMSLの活動2022/23─学生たちが国内外でプロの制作現場に参加

アートサイエンス学科
2023/11/06

世界初となるアンドロイドと音楽を科学するラボラトリーとして、アートサイエンス学科に誕生した「Android and Music Science Laboratory(AMSL)」。渋谷慶一郎客員教授や今井慎太郎客員教授が中心となり、アンドロイド・オルタ4によるパフォーマンスやインスタレーション作品の制作などを行い、そのプロセスを学生に公開し、2022年4月から年間を通してさまざまな活動を行ってきました。

アートサイエンス学科の学生たちがプロジェクトに参加

AMSLでは、アンドロイド・オペラ®︎『Scary Beauty』や『MIRROR』を発表するなど国内外で活躍する音楽家の渋谷先生と、同作でアンドロイドのプログラム開発を担当するコンピュータ音楽家の今井先生らと共に、主にオルタ4をはじめとするアンドロイドの研究や、作品制作が行われています。年間を通じて、学生たちもさまざまなプロジェクトに参加し、作品のコンセプトからプロセス、フィニッシングまで制作過程を体験。これまで、ショートフィルム制作や、大々的なイベントでのアンドロイド・オペラ®の上演、海外アーティストとの交流などを通して、音楽とサイエンスの融合をより身近に感じ、実践的な学びを得ています。学生たちは、世界のトップブランドとのコラボレーション作品制作の現場を見学するだけでなく、世界的なアート作品がどのように作られていくのか裏舞台を見て知ることはもちろん、第一線で活躍するレジェンド的なアーティストやエンジニアをはじめ、多くのスタッフと交流を持つことで、将来進みたい道や、やりたいことを見出す貴重な経験を積み重ねています。

Gucciのショートフィルムや、BMWジャパンプレミアイベントで上映されたアンドロイド・オペラ®制作が実施

AMSLでの活動の第一弾として行われたのは、2022年8月10日に発表された、同年75周年を迎えたGucciのバンブーハンドル バッグの世界観を彷彿させるショートフィルム『Kaguya by Gucci』(監督:長久允、主演:満島ひかり、アオイヤマダ、永山瑛太)に、渋谷先生が音楽を書き下ろし、オルタ4がヴォーカルを担当したものです。映像ではオルタ4が初のメイクアップを施し、渋谷先生と共に出演。日本最古の物語といわれる「竹取物語」のストーリーをベースに、東京を舞台に現代的に再構築した約6分のショートフィルム『Kaguya by Gucci』で、全編にわたる音楽により、オルタ4は物語を伝える狂言回し的な役割を果たしています。日本で制作されたこのショートフィルムとビジュアルは全世界のGucci.comおよびグッチ公式YouTubeチャンネルと公式SNSアカウントなど幅広いメディアで公開されました。

また、2022年11月15日、BMWの新型7シリーズの発表会として東京・六本木の国立新美術館で開催されたジャパンプレミア「FORWARDISM BMW THE SEVEN ART MUSEUM」で上演されたアンドロイド・オペラ®においては、学生たちは、渋谷先生と今井先生がAMSLで行う作曲やプログラミングの制作進行を間近で体感。作品の意図やコンセプトはもちろん、制作過程においての考えについて直接話を聞く機会も設けられました。そして、イベント当日は舞台の裏側を含め、会場を見学すると共に、オルタ4や機材の設置や準備を手伝うなど、プロジェクトに参加。学生たちはアンドロイドの組み立てや機材に触れながら、テクニカルな部分への理解も深めていきました。

海外アーティストがAMSLを訪問し、学生たちも同席

そして、2022年11月には、渋谷先生と数年来の友人である、義足のバイオニック・ポップ・アーティスト ヴィクトリア・モデスタ氏がアメリカ・ロサンゼルスから来日した際、AMSLを訪問し、セッションを行いました。モデスタ氏の歌に合わせて渋谷先生が演奏、オルタ4もモデスタ氏の声を聞いて即興的に歌うという実験的なパフォーマンスです。モデスタ氏はテクノロジーとアート、そしてポップとの境界を推し進めるアーティストの1人です。モデスタ氏がAMSLを訪れた日は、WOWOWが制作・放送・配信した「ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM LIFE ヴィクトリア・モデスタ(バイオニック・ポップ・アーティスト)」の取材が入っており、2023年1月29日に放送されたこの番組は第64回科学技術映像祭で文部科学大臣賞(研究・技術開発部門)を受賞しています。学生たちは、音楽とアート、テクノロジーの融合を通した海外アーティストとの交流の場にも、積極的に参加しています。

アンドロイド・オペラ®『MIRROR』がパリ・シャトレ座で公演

2023年6月21〜23日の3日間にわたり、パリ・シャトレ座でアンドロイド・オペラ®『MIRROR』の公演が行われました。渋⾕先生をはじめ、オルタ4のプログラミングを担当する今井先生、学生らを含む総勢約15⼈が⽇本からフランスへ渡航。ステージは、オルタ4を中⼼に、ピアノと電⼦⾳を奏でる渋⾕先生、47⼈編成のオーケストラ・アパッショナート、⾼野⼭に伝わり1200年の歴史を持つ声明を唱える5⼈の僧侶、フランス⼈アーティスト、ジュスティーヌ・エマール氏の映像で構成。アンドロイドやAIが世界的に注⽬を集める中、⼈間とAIが作り出す最先端の⾳楽芸術はフランスのメディアでも大きく取り上げられました。全12曲のうち、3つの「レチタティーヴォ」と呼ばれるオルタ4と声明や電⼦⾳のインタラクションを伴うダイアローグともいえる演奏は、GPT(AI)で作られた歌詞に声明や電⼦⾳を聴き取りながら即興的にメロディをつけるという未知の⾳楽体験を⽣み出しました。本公演の映像の⼀部が公開(https://youtu.be/F-vC0D7WRZM)され、全編の映像は国際交流基⾦の公式YouTubeにてオンライン配信プログラム「STAGEBEYONDBORDERS」の⼀環として2024年の2⽉頃に公開予定です。


今後もAMSLでは、国内外におけるアンドロイドと音楽による新たな作品を制作し、発表していく予定です。学生たちは、今年度も引き続き、さまざまなプロジェクトに関わることで、渋谷先生や今井先生が手がける作品制作を体感することはもちろん、国内外での公演を実現可能にする制作進行を目の当たりにし、実践的な学びを深めていきます。

アートサイエンス学科 3年
川越 創太 さん

AMSLには、さまざまなコンセプトを持つアーティストの方々が創造的なアイデアを共有し、新しい音楽や芸術の形態を探求するために訪問される機会があります。AMSLでの活動において、アンドロイドと人が奏でる新しい音楽の誕生の瞬間を直接体感できることがとてもうれしいです。
これまで、異なるジャンルのアーティストの方々との交流や、プロジェクト進行のプロセスを観察することで制作手法や発想の仕方を学び、自身の制作活動に新たなアプローチを取り入れることができました。このような贅沢な経験は、AMSLに参加しなければできなかったと思います。数々のプロジェクトを間近で見るにつれ、自己成長を感じられます。
また、オルタ4にとって初めての海外公演となるアンドロイド・オペラ®に同行した際は、パリ本場のオーケストラの舞台裏を⾒学し、リハーサルでお⼿伝いする機会をいただきました。プロの⾳楽家・演奏者が⼀体となって演奏を練り上げる様⼦を⽬の当たりにし、彼らの情熱と集中⼒に圧倒されながら、私もできる限りのサポートをしました。リハーサルでは、舞台監督や照明監督からの指⽰に従い、機材のセッティングや⼩道具の準備などを⼿伝いました。その中で感じた舞台の緊張感は⾔葉に表せないほどでした。
渋谷先生や今井先生をはじめ、第一線で活躍されているさまざまなアーティストの方々の活動に携われた機会を無駄にしないためにも、大阪芸大の一員としてこの経験やヒントを生かし、卒業制作やクリエイティブ業界への就職に向けてさらなる創作活動に取り組んでいきたいと思っています。

アートサイエンス学科 3年
田中 健翔 さん

私はAMSLで、声明とのコラボ作品や、日本国内外のアーティストの方々とのコラボ作品の制作のお手伝いをさせていただきました。渋谷先生をはじめ、第一線で活躍されている音楽家の方々の作品制作過程に関わり、彼らの国内外での活動の仕方や仕事の受け方、作品制作中に考慮すべき事柄などを学ぶことで、将来に向けて重要な知識や経験を身につけることができ、大変勉強になっています。
特に、作品制作においてコンセプトを明確にすることの大切さや、英語の重要性を感じました。今後は、自身の制作活動でしっかりとしたコンセプトを立てることはもちろん、AMSLを通して海外に渡る機会や、海外のアーティストと交流する場面があるため、実践的な英語力を身につけていきたいと思っています。
パリで行われたアンドロイド・オペラ®『MIRROR』の公演の同行させて頂いた時は、公演の度に照明の動き⽅が変わったり、曲がアレンジされたりして、公演が始まってからでも、変えていくことでより良くなっていくことを体感しました。また、⾃分から積極的に⾏動をすることで、人から教えてもらえたり話をする機会が多くなるため、学べることが増えると思いました。
今後は⽇本国内にとどまらず、海外の⽅々との交流や作品制作、海外に向けた活動など積極的に国際的な活動をしたいと考えています。⾃分から積極的に⾏動し、コミュニケーションをとる、仕事をする時はしっかり集中し、休憩を取る際はきちんと休み、その切り替えを早く⾏い、楽しみながらしていきたいです。

アートサイエンス学科 3年
黄 柑棠 さん

私は、東京の国立新美術館で行われた「FORWARDISM BMW THE SEVEN Art Museum」で上演されたアンドロイド/オペラ®︎において、AMSLでプロジェクトのプロセスを間近で見て学び、イベント当日も会場でパフォーマンスを見学し、機材の設置やチラシ配りなどお手伝いさせていただきました。大々的なイベントに参加したため、とても緊張しましたが、校内だけでは学ぶことのできない貴重な経験ができたと思います。
今年は特に難しい業務などを担当したわけではありませんが、自分が未知の分野にいることを改めて実感しました。これからは、さまざま場面で緊張することなく、未知の世界に立ち向かう勇気を得ることができたと感じています。今後も、このプロジェクトで学んだことを生かし、より多くのことに挑戦していきたいです。

Photo Gallery