世界初となるアンドロイドと音楽を科学するラボラトリーとして、アートサイエンス学科に誕生した「Android and Music Science Laboratory(AMSL)」。渋谷慶一郎客員教授や今井慎太郎客員教授が中心となり、アンドロイド・オルタ4によるパフォーマンスやインスタレーション作品の制作などを行い、そのプロセスを学生に公開し、2022年4月から年間を通してさまざまな活動を行ってきました。
AMSLでの活動の第一弾として行われたのは、2022年8月10日に発表された、同年75周年を迎えたGucciのバンブーハンドル バッグの世界観を彷彿させるショートフィルム『Kaguya by Gucci』(監督:長久允、主演:満島ひかり、アオイヤマダ、永山瑛太)に、渋谷先生が音楽を書き下ろし、オルタ4がヴォーカルを担当したものです。映像ではオルタ4が初のメイクアップを施し、渋谷先生と共に出演。日本最古の物語といわれる「竹取物語」のストーリーをベースに、東京を舞台に現代的に再構築した約6分のショートフィルム『Kaguya by Gucci』で、全編にわたる音楽により、オルタ4は物語を伝える狂言回し的な役割を果たしています。日本で制作されたこのショートフィルムとビジュアルは全世界のGucci.comおよびグッチ公式YouTubeチャンネルと公式SNSアカウントなど幅広いメディアで公開されました。
また、2022年11月15日、BMWの新型7シリーズの発表会として東京・六本木の国立新美術館で開催されたジャパンプレミア「FORWARDISM BMW THE SEVEN ART MUSEUM」で上演されたアンドロイド・オペラ®においては、学生たちは、渋谷先生と今井先生がAMSLで行う作曲やプログラミングの制作進行を間近で体感。作品の意図やコンセプトはもちろん、制作過程においての考えについて直接話を聞く機会も設けられました。そして、イベント当日は舞台の裏側を含め、会場を見学すると共に、オルタ4や機材の設置や準備を手伝うなど、プロジェクトに参加。学生たちはアンドロイドの組み立てや機材に触れながら、テクニカルな部分への理解も深めていきました。
海外アーティストがAMSLを訪問し、学生たちも同席
そして、2022年11月には、渋谷先生と数年来の友人である、義足のバイオニック・ポップ・アーティスト ヴィクトリア・モデスタ氏がアメリカ・ロサンゼルスから来日した際、AMSLを訪問し、セッションを行いました。モデスタ氏の歌に合わせて渋谷先生が演奏、オルタ4もモデスタ氏の声を聞いて即興的に歌うという実験的なパフォーマンスです。モデスタ氏はテクノロジーとアート、そしてポップとの境界を推し進めるアーティストの1人です。モデスタ氏がAMSLを訪れた日は、WOWOWが制作・放送・配信した「ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM LIFE ヴィクトリア・モデスタ(バイオニック・ポップ・アーティスト)」の取材が入っており、2023年1月29日に放送されたこの番組は第64回科学技術映像祭で文部科学大臣賞(研究・技術開発部門)を受賞しています。学生たちは、音楽とアート、テクノロジーの融合を通した海外アーティストとの交流の場にも、積極的に参加しています。
私は、東京の国立新美術館で行われた「FORWARDISM BMW THE SEVEN Art Museum」で上演されたアンドロイド/オペラ®︎において、AMSLでプロジェクトのプロセスを間近で見て学び、イベント当日も会場でパフォーマンスを見学し、機材の設置やチラシ配りなどお手伝いさせていただきました。大々的なイベントに参加したため、とても緊張しましたが、校内だけでは学ぶことのできない貴重な経験ができたと思います。
今年は特に難しい業務などを担当したわけではありませんが、自分が未知の分野にいることを改めて実感しました。これからは、さまざま場面で緊張することなく、未知の世界に立ち向かう勇気を得ることができたと感じています。今後も、このプロジェクトで学んだことを生かし、より多くのことに挑戦していきたいです。