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アーティスト 松本セイジ氏が「JAPAN WALLS 2023」で壁画と向き合う アーティスト 松本セイジ氏が「JAPAN WALLS 2023」で壁画と向き合う

美術学科
2023/12/25

世界屈指のストリートアートプロジェクト「WOLRLD WIDE WALLS」の一環として「JAPAN WALLS 2023 in SHIRAHAMA」が10月23日〜28日の6日間に渡って開催されました。ウォールアート制作のアーティストとして、大阪芸術大学美術学科の卒業生で、アーティストとして多方面で活躍する松本セイジさんが参加。制作の場となったのは、大阪芸術大学グループが運営する塚本学院白浜研修センターの壁面です。塚本学院白浜研修センターは白良浜まで徒歩で数分と絶好のロケーションに建つ施設。在学生のゼミ旅行や研修はもちろん、卒業生の利用も多く人気の宿泊施設です。松本セイジさんの新たなキャンバスとなったのは、美しい白良浜を望む東側の壁面です。

ウォールペインティングの初日の制作風景。これから、この壁がどうなっていくのか楽しみです

「ねずみのANDY」の不思議な存在感が
見る人の想像力を刺激する

「壁面に長く残る作品を描くなら、一番思い入れのある『ねずみのANDY』をモチーフにしようと決めていました」という松本さん。いくつか案を考えて、最後まで残ったのは、サングラスをかけてビーチを眺めているANDYと、壁の穴から顔を出しているANDYの頭の上でカモメが羽をなら休めているアイディアの2つ。海辺の街らしさと、そして遠くから見ても目につきやすいビビッドな色が使えるからと、ANDYとカモメというモチーフが採用されることになりました。「ANDYが顔を出している穴はどこへと続いているんだろう、ANDYとカモメはどんな風にして仲良くなったんだろうとか、色々と想像を膨らませてほしい」と松本さんはにこやかに語っていました。

僕の描くものは、シンプルなフォルムだから、色と色の境界を慎重に塗っていきたい、と集中した表情を見せる松本さん

建築物の大きな壁面に描く
ウォールアート制作に挑む

松本さんは、今までも大きな壁面に作品を描いたことはありましたが、屋外の巨大な壁面でパブリックアートを制作するというのは初めての体験。実は、松本さんは高いところが苦手なのだそう。研修センターは3階建てですが、斜面に建っているため、ANDYのうえで羽を休めるカモメを描くために設けられた足場の最上層に立つと15m近い高低差になります。周囲の道からもよく見える場所とあって、通りすがりの人が思わず足を止めて「すごいところに描いていますね」と声を掛けられることもしばしば。「集中して作業をしているから、上ではあまり高さのことは考えませんが、足場から降りてくると、やっぱりほっとしますね」と作業にひと区切りをつけた松本さんは、ANDYたちの表情が思う通りに描けているかをチェックしながら、つぶやいていました。

建物の東側に設けられた足場の上から眺めると、白良浜の美しい眺めが広がっています

松本セイジさんが大学で
学んだのは意外にも版画

美術学科では木版画を学んだという松本さん。今とはまったく制作スタイルが異なるようにも思える版画を選んだのは、「絵を描くことは、大学に入る前から、やっていたので想像がついたんですよ。でも版画は未知な世界だったから」ときっぱり。さらに「どんなイメージを作りたいかを考えて、版を彫り、色をのせて刷るというように版画には多くのプロセスがあって、様々な機材も必要。だから、せっかく大学で学ぶなら版画という選択になりました」とのこと。アーティストとして独り立ちするために、いきなりNYで暮らし始めたり、帰国してから福島、長野と拠点を転々としたりと、それまで知らなかった新しい世界へと飛び込んでいくことが松本さんの遺伝子に刻み込まれているのかもしれません。

狭い足場の上で可能な限り離れて、イメージ通り描けているかどうかを確かめていました。作業かひと段落つくと、下まで降りて再びチェック

シンプルさを突き詰めたフォルムは
NYでの暮らしをきっかけに生まれた

足場のうえで壁画を描いていて、ANDYを見た通行人から「かわいい!」と声をかけられると「ありがとうございます」と顔をほころばせて挨拶を返す松本さん。ANDYを描き出したのは、松本さんがNYに行っていた頃のこと。地下鉄で見かけたネズミをモチーフに、ANDYというキャラクターを創り出しました。当時は、住民の半分近くが移民という多様性に満ちたクイーンズ地区に住んでいて、スペイン語や中国語、ベトナム語、まったくわからない言語が飛び交う環境。そこでは「人と違うのが当たり前だった」。だから、ANDYのフォルムをイメージしたときに、しっぽがなくたっていいやと思え、そこからシンプルにひたすらシンプルにと突き詰めていくことで「ねずみのANDY」が生まれたとそうです。

違うジャンルで活躍する人々と
出会い刺激し合う経験が大切

NYで個展を開き、多くの人々から注目されるきっかけを掴んだ松本さん。それは、色々な人との出会いを大切にしてきたから掴み得たチャンスだったのかもしれません。松本さんはNY時代の友人たちと「コペルズ」というアーティスト集団をつくっています。画家や写真家、美容師などクリエイティブに対するアプローチがそれぞれ異なるメンバーと深く付き合うきっかけになったのは、そのなかの一人が大阪芸大の卒業生だったというのも大きかったそうです。だから、「自分の学科だけでなく、他の学科で友だちを作るのは楽しいし、有意義だと思う」と語っていました。「JAPAN WALLS」でも松本さんのオープンなスタイルは変わりません。宿舎となっているホテルシーモアのレジデンスで、松本さんは参加アーティストたちと夜遅くまで語り合い、交流を深めていました。日本各地はもちろん、海外からも多くのアーティストが集うレジデンスは、まさに多様なアイディアや考え方が融けあい、渦巻くアートのおもちゃ箱のような雰囲気。昨年に引き続き参加していた大阪芸大の卒業生、WHOLE9のhitchさんやEri2winさんともお互いの作品について語り合い、制作ツールやノウハウについて情報交換する実りの多い日々を送ったそうです。

JAPAN WALLS 2023のクリエイティブディレクターと作品について語り合う松本さん

見る人の想像力を触発する
独特な目の表情で惹きつける

ANDYの目は独特の表情を持っています。とぼけているのか、愛嬌があるのか、リラックスしているのか、ちょっと見ただけでは、その裏にある感情がわからないのがANDYの目。「人って相手が何を考えているかわかると、ちょっと安心するじゃないですか。でも目が合わないと何を考えているんだろうと色々考えてしまうもの」と松本さんは語ります。自分が描く絵をきっかけに、見る人なりの想像が膨らんでいってほしいと思って、目の表情にはもっとも注意を払っているとのこと。壁画全体が出来上がってから、ANDYをシンボリックなアイコンにしている目を慎重に塗り終わった松本さんは、どこか満足そうな表情を浮かべていました。

ANDYに魂が入る瞬間。丁寧に刷毛を扱い、狙いすました位置にまん丸な目をいれていく松本さんは自然と寡黙な表情に
白浜研修センターの壁に描かれたANDY。下には”Seiji“のサインが

アートプロジェクトの支援で
アーティストが活躍する未来へ

「JAPAN WALLS」に3年前から協賛してきた大阪芸術大学。それは30年以上に渡って運営してきた研修センターのある白浜が大阪芸術大学にとっても縁の深い土地だからということ。また、アートをテーマにしたイベントやアートカルチャーがその地に根づくことは、本学にとっても喜ばしいことだからです。例えば、卒業生のギャグ漫画家、石塚大介さんは「JAPAN WALLS」で壁画に初挑戦したことをきっかけにダイナミックなペインティングに開眼し、福岡のアートフェアで個展「GIANT KILLING」を開くという新展開を見せています。本学出身のクリエイティブチーム透明回線も3年前に参加。それ以来、彼らは白浜でのアートプロジェクトに頻繁に参加するなど、この地との結びつきを深めているのです。

白浜での開催は3年目を迎え、今回の作品とあわせて、白浜の街を彩るウォールアートは20点を超えるまでになっています

松本セイジ

1986年、大阪府生まれ。

大阪芸術大学卒業後、デザイナーとしてキャリアをスタートさせました。

東京、ニューヨークでの活動を経て、現在は長野県の山麓にアトリエを構えて活動しています。

アート、イラスト、グラフィックデザインの垣根を越えて様々なフィールドで自身の世界観を表現している。

これまでに東京、ニューヨーク、ロサンゼルス、ソウルなどの都市で個展やアートイベントへ参加。New Balance、NIKE、UNIQLO、The New York Timesなど国内外の様々なプロジェクトにも携わる。



◆松本セイジ オフィシャルサイト

http://seijimatsumoto.com/


◆松本セイジ Instagram

https://www.instagram.com/seijimatsumoto_arts/


SEIJI MATSUMOTO -JAPAN WALLS 2023-

https://www.youtube.com/watch?v=dK3sfGMjNnM