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芸術計画学科と大阪府立近つ飛鳥博物館の博学連携事業として、「翠光を纏う時空-勾玉は目覚め、明日を照らす―」が、2022年2月に開催されました。同博物館の吹き抜け空間に光を通す巨大な勾玉のオブジェが出現。アートの力で、古代の勾玉を令和の世によみがえらせる展覧会となりました。
2021年11月、大阪芸術大学と大阪府立近つ飛鳥博物館は、博学連携で展覧会を企画する協定を締結。芸術計画学科の基幹授業「プロジェクト演習」として、展示やワークショップ等の企画、広報、進捗、予算、運営計画等を立案し、実施することになりました。今回開催された「翠光を纏う時空」は、その第一弾。アートプロデュース研究領域「近つ飛鳥チーム」の学生・卒業生・教員らが力を結集させ、博物館×アートの新しい愉しみ方を提案する展覧会をつくりあげました。
展示のメインとなった大型オブジェは、古代の遺跡から出土したヒスイの勾玉を、ライトボックスを用いて撮影し、半透明の特殊シートに約500倍に引き伸ばして制作したもの。地階から天井まで続く吹き抜けのギャラリーに張り巡らし、翠色の光で空間を満たすインスタレーションを展開しました。他にも写真や映像、音響、造形など様々なアートが融合。訪れた人たちは、宙に浮かび飛翔する勾玉に圧倒され、様々な作品を楽しみながら古代に思いを馳せていました。
学生たちと一つのチームとしてプロジェクトに取り組むのは、とても充実した心地良い時間でした。今回私は、勾玉のインスタレーションのテクニカルディレクションを担当。足場のない巨大な吹き抜け空間に吊りの造作を行うため、図面を参考に模型を作成する作業から始めて、撮影から作品設置まで全ての工程に立ち会いました。美術家として地域に根ざすアートの制作に取り組んできた私自身にとっても、勾玉という古代の遺物と対話を重ねて作品化、表現することは、大変やりがいのあることでした。
展覧会は、展示を仕上げて終わりではなく、そこからがスタートです。学生たちには「つくる」だけでなく、見る人にしっかりと「伝える」ことも学んでほしい。来館された方に声をかけパンフレットを手渡すなど、積極的にアクションを起こす大切さも知ってもらえたのではないでしょうか。
歴史ある収蔵品を備えた博物館が大学のすぐ近くにあり、古いものと新しいものを融合した独自の表現に挑めるのは、非常に珍しく価値のあることです。今後も学生と教員が力を合わせ、色々な可能性を広げていけたらと思います。
今回の展覧会はコロナ禍で当初より1年遅れの開催となりました。「近つ飛鳥チーム」の先輩たちの敏腕ぶりに憧れて参加したのですが、前年の企画を引き継ぐだけでなく、新しい内容も加えてさらに進化させていくのは難しかったです。僕はチームリーダーとして、進行状況の管理や全体の統括を担当。メンバーの得意分野をいかして役割を分担し、足りない部分を補い合いながら準備を進めていきました。
ワークショップはコロナのため直前に中止となってしまい、搬入時には展示に必要な物品が不足するなどのトラブルも。苦労した分、無事に仕上がった時はほっとしました。地元の方々が何度も足を運んでくださったり、小学生の子どもたちに驚いたり楽しんだりしてもらえたのは、本当に嬉しかったですね。
リーダー体験は初めてで、自分が引っ張るというより周りのメンバーを信頼して頼り、細かくコミュニケーションを取るよう心がけました。手探りながらも展覧会を成功させたことで自信がつき、地域に貢献できる仕事の魅力も感じました。この体験をもとに、これからもチームワークをいかしたものづくりに関わっていきたいです。
空間や雰囲気の演出に興味を感じてこのプロジェクトに参加し、映像作品の制作を担当しました。勾玉にキャラクター性を持たせることを着想し、勾玉の鼓動や回転によって、生き物のように年齢を重ねていくさまを表現。古代文字から現代の文字に変化させるなど、色々なアイデアを盛り込んで工夫を凝らしました。
コンセプトを組み立てて映像の構成を考えるのは楽しく、制作していた数か月間は、常に勾玉のことで頭がいっぱいに。画像や音楽を担当するメンバーと何度もやり取りを重ね、完成時には達成感とともに、終わってしまう名残惜しさも感じたほどです。ただ実際に会場に投影してみると、背景になる空間とのバランスなど反省点も見えてきて、今後にいかせる学びになりました。
芸術計画学科は、自ら探し、自ら動くことで、やりたいことが見つかる場所。今後は学科の枠を超えて、色々な人をつなげるような企画をプロデュースしてみたいですね。さらに積極的に行動を起こしていこうと意欲が高まっています。
大阪府太子町出身の私にとって、近つ飛鳥博物館は子どもの頃からなじみ深い場所。地元に密着したプロジェクトで、人物撮影という自分の得意ジャンルでの作品制作を任され、戸惑いや不安はありながらも、気合が入りました。
テーマは「勾玉に導かれ、時を超えて出会う古代と現代の少女」。古墳や自然の風景の中で、寒い時期のロケーション撮影には苦労しましたが、モデルやヘアメイクを務めてくれたメンバー、博物館職員の方など大勢の協力を得て、とても力のある作品になったと思います。地域のお客様に見てもらえたのは何よりの喜びでした。
入学当初はフェスなどのイベントプロデュース志向が強かった私ですが、「プロジェクト演習」などで色々な現場を体験しながら学ぶうち、次第にアートプロデュースへの興味が深まっていきました。本当に好きなことを見つけ、一からつくりあげるやりがいを仲間と共有できて良かったです。卒業後は建築デザイン系の会社に就職予定。また新たな道で、ここで得たものを自分らしくいかしていきたいと思います。
もともと飛行機など無機質なモノを撮るのが好きで、モノに対しても人と向き合うようにカメラを向け、そこに宿るキャラクターを写し取りたいと考えてきました。博物館の写場で行った勾玉の撮影では、ライトボックスで光を際立たせ、超高画素デジタルカメラとマクロレンズを使用。すると長さ約2.5cmほどの勾玉の中にミクロな世界が現れ、宇宙のように広大な景色が広がっていったのです。撮影は丸一日かかりましたが、まるで一瞬の出来事のように感じられる特別な体験でした。
芸術計画学科のプロジェクトに参加するようになったのは、同学科の友人を通して谷先生に作品を認めていただいたのがきっかけ。他分野の仲間と一つのことに取り組む楽しさを知り、プロの手による緻密で慎重な搬入作業など多くの人が関わって作品ができあがる工程も目の当たりにして、様々な収穫を得られました。学内で領域を超えた刺激を得るだけでなく、学外でも様々なジャンルの人とつながりあい、もっともっと視野を広げていこうと考えています。