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大阪芸大アートサイエンス学科で客員教授を務める村松亮太郎先生率いるクリエイティブカンパニー・ネイキッドは、デジタルの力で都市をアートへ変えようとしている。大阪と東京での取り組みから未来の都市の姿を考えたい。
撮影:田頭 真理子 photographs:TAGASHIRA MARIKO
個人の時代。近年の社会のことをそう呼ぶことが多くなった。だが、はたしてそうだろうか。“空気を読む”という言葉が一時期もてはやされたように、人々は異質なものを排除し、同質を求めるようになっている。同じは落ち着くからだ。それは人だけにとどまらない。都市においても同じことが起こっている。
グローバリゼーションとローカリゼーションのはざまで日本のどの都市に行っても似たビルが建ち、同じショップが並ぶ。おかげさまでどんな場所に行ってもほしいものが手に入るようになった。だが、それと同時に都市の個性は失われつつある。
そんななかにおいて、クリエイティブカンパニー・ネイキッドの代表であり、大阪芸大アートサイエンス学科で客員教授を務める村松亮太郎先生の取り組みは、未来の都市形成において重要な役割をはたしているといえる。村松先生が行っているのは、失われつつある都市の個性の再発見だからだ。
たとえば2012年に東京駅で開催された『TOKYO HIKARI VISION』では、東京駅を交通機関としてだけでなく、100年間にわたる人々の営為が蓄積された場所と意味づけ、プロジェクションマッピングで演出して話題を集めた。
また、2016年の冬に取り組んだ『大阪市中央公会堂・プロジェクションマッピング』も、そのひとつの例といえるだろう。このイベントで村松先生は、大阪の街がどのように変化していくのかを過去から現在、そして未来に向かってストーリー化。モチーフとして呉服、大阪万博、上方歌舞伎などが盛り込まれた。
これらは大阪という都市で人々の生活に根づき、発展してきたものだ。そうした時間を超越して残るものに都市としての個性は息づく、というひとつの答えを示すものになっただろう。都市が持つ個性をいかに形にしていくのか。それをあらためて考えることが、これからの都市をつくっていくうえで重要になるはずだ。
<写真>『大阪市中央公会堂・プロジェクションマッピング』
226万人以上を集めた『OSAKA光のルネサンス 2016』のプログラムのひとつ。大阪芸大の学生と高校生たちが、総合プロデューサーを務める村松先生とともにプロジェクションマッピング作品を制作。「0×0=∞」をテーマに、約6ヵ月を費やしてゼロから作品をつくり上げた。完成した作品は、クリスマスシーズンに12日間にわたって公開され、大成功のうちに終了した。