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2017年3月から「IHIステージアラウンド東京」という、新しい劇場システムを使って公演を続けている劇団☆新感線。この劇場に集まる1300人もの観客を毎日沸かせる芝居をつくり続けているのが、劇団☆新感線の主宰であり、演出家・劇作家の いのうえひでのりさんだ。
回る客席と舞台を活かした演出
――円形に配置された観客席をスクリーンとステージがぐるりと取り囲み、客席が回るという新しい劇場システムを使うにあたり、まずどんなことを考えましたか。
いのうえ 話を聞いたとき、最初は客席が回るってどういうこと?と思いました。そこで、そのシステムをつくったオランダの劇場に見に行ったんです。セットが客席の周囲にあって、客席が回りながら舞台が展開していくのは僕の想像どおりでしたが、360度に広がる画角の広いスクリーンがすばらしかった。客席が回ることより、むしろこのスクリーンを生かして芝居をすることに、この劇場の新しさと可能性を感じました。
最初は試行錯誤しましたが、最新作『修羅天魔~髑髏城の七人 Season 極』では 1 年間の経験と知見を経て、これまでにない場面転換が実現できました。
――いのうえさんは以前から新しいテクノロジーを使うことに意欲的に取り組んでいるという印象があります。
いのうえ 確かにLEDやプロジェクションマッピング、ウォータースクリーンなど新しいものへの興味が強く、一度は舞台で使ってみようと意識していた時期もありました。
その一方で、最近はお芝居の中身をもっときちんとつくりこみたいという気持ちも強くなってきました。実はこの先、2020年までほぼ予定が埋まっています。大きな舞台もおもしろいのですが、学生のときのように小規模でも、自分がやりたいことありきの作品をいつかつくれたら、と思っています。
――劇団☆新感線結成時から変わらず続けていることはありますか。
いのうえ 大阪芸大在籍時に、僕は秋浜悟史先生から薫陶を受けたのですが、最初の授業で「僕の授業は、君たちに演劇をあきらめさせるためにやっている」と言われました。それくらい演劇とは厳しいものだと。
いろいろ教えていただきましたが、「それが舞台で成立しているかどうか」ということは、いまでも演出時に意識していることです。全体をとおして舞台が成立していることも大事ですが、それ以前にひとつのシーンのなかで役者が人として立っている姿に無理がないか。そこで語ろうとしていることにうそがないか、そういう部分に意識を向けるようにしています。
大学時代、僕はひたすら芝居をしていました。でも、それがおもしろいと感じたからこそ、いままで続けてこれたのだと思います。どんなに生活が苦しくても、芝居をやっていてつらいことは何もなかった。好きだから続けられて、いまの自分があると思っています。