本サイトはInternet Explorerには対応しておりません。Chrome または Edge などのブラウザでご覧ください。
Topics

作品が生まれる舞台裏を見に行こう
【建築家 妹島和世】
作品が生まれる舞台裏を見に行こう【建築家 妹島和世】

建築学科 / その他
2021/06/11

その独創的なアイデアは、どこから?大阪芸術大学 アートサイエンス学科新校舎について、建築家の妹島和世氏に話を聞いた。

妹島さん、
アートを生みだす建築、
その秘密を少し教えてください。

今回大切にしたことは、大きく3つ挙げられます。


第1のポイントは外観の印象。丘の上の立地で、坂を上ってくると最初に目に入る建物になるので、建物が主張しすぎないように丘と一体化させ、環境と調和させたいと考えました。「土地に合わせてここをカーブさせよう」と試行錯誤しているうちに、自然と有機的なフォルムになっていきました。


第2のポイントは、建物が“開かれている”こと。内と外との自然なつながりを重視して、いろんな方向から出入りできて、内側からはさまざまな方向に外の風景が見えるように工夫しました。


第3のポイントは、交流の場になること。アートサイエンス学科以外の学生も気軽に立ち寄れて、新しい出会いが生まれる空間になることをめざしています。 


公共施設でも住宅でも、私が理想とするのは、「公園」のような建物。公園は、遊ぶ子ども、語らうカップル、お弁当を食べるサラリーマン、本を読む高齢者などいろんな人が、他者の気配や自然を感じながらも自由にくつろげる、開かれた空間。建物であっても、つねに視線の先に緑や人の動きがあり、それが心地よく感じられる空間にしたい。


「公園のような建物を」という願いが、この新校舎にも少なからず反映されていると思います。


●妹島和世(せじま かずよ) 1956年茨城県生まれ。建築家。日本女子大学大学院修了後、伊東豊雄建築設計事務所に入所。1987年妹島和世建築設計事務所を設立。1995年に西沢立衛氏とSANAAを設立し、共同設計を開始。ベネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞、アーノルド・ブルンナー記念建築賞など国際的な賞を多数受賞。2010年には建築界のノーベル賞と称されるプリツカー賞を西沢立衛氏と共に受賞。横浜国立大学大学院Y-GSA教授、大阪芸術大学客員教授、ミラノ工科大学教授、日本女子大学客員教授。

これ、妹島さんの作品の一部です

大阪芸術大学 アートサイエンス学科新校舎/建築面積 :2,684.2㎡ 延床面積 :3,137.5㎡ 階数 :地上2階/地下1階 構造種別 :鉄筋コンクリート造 設計 :妹島和世建築設計事務所
金沢21世紀美術館/正面や裏側といった区別のない円形に、大小の直方体が差し込まれたような独創的なデザイン。内外の壁面の多くにガラスを採用し、「透明であること、明るいこと、開放的であること」が追求された。 © SANAA
ニュー・ミュージアム ・オブ・コンテンポラリー・アート/有名無名を問わず、実験的・革新的作品を展示する現代美術館。さまざまな高さの空間が少しずつずれた状態で積み上げられた状態で1棟のビルを構成している。各階にテラスがあり、開放感が重視されている。 © Dean Kaufman
ルーヴル=ランス/フランス北部の街・ランスにあるルーヴル美術館の別館。アルミの外壁が光を柔らかく反射しながらランスの風景を映す。ギャラリー内では作品と鑑賞者の姿が映し出され、歴史が現代につながる連続性を感じることができる。 © Kazuyo Sejima + Ryue Nishizawa / SANAA, Tim Culbert + Celia Imrey / IMREY CULBERT, Catherine Mosbach
ROLEX ラーニングセンター/スイス連邦工科大学ローザンヌ校の多目的学習センター。床が大きくうねり、丘や谷が存在する大きなワンルームの中に、図書館やレストラン、自習空間などを仕切りなく配置。窓ガラスからは山や湖を眺められる。 © SANAA
グレイス・ファームズ/地域の人々のイベントやスポーツ活動、アート鑑賞などのための多目的施設。東京ドーム約7個分の敷地の一角に、川の流れのようにたたずむ建物「リバー」。体育館や礼拝堂などが蛇行する細長い屋根で一体化している。 © Iwan Baan
すみだ北斎美術館/1棟の建物がスリットによって緩やかに分割された特徴的な外観。角度がさまざまに変化する外壁が風景の映り込みを変化させ、公園や地域と一体化する。スリットから館内の様子が見え、住民も美術館を身近に感じられる。 © Kazuyo Sejima & Associates
荘銀タクト鶴岡/山形県鶴岡市の文化会館。山の稜線との重なりを避けて、緩やかなカーブの屋根が複雑に組み合わされた美しい外観。建物に自然と入っていける大らかな形で、内側からは周囲の美しい街並みを借景として楽しむことができる。 © SANAA