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2022年12月17日、大阪市中央公会堂の大集会室にて「クリスマス・ポップスコンサート」が開かれました。当日の中之島はイルミネーションを楽しむ人で賑わっていましたが、100年以上の歴史をもつ大阪市中央公会堂の館内は厳かな雰囲気。大勢の観客が見守る中、オーディション審査を勝ち抜いた学生たちが、この日のために磨いてきた技術を披露しました。
演奏学科ポピュラー音楽コースでは、演奏技術はもちろん、観客を魅了するパフォーマンスの技術も学んでいます。そして、その実践の場として、実際に舞台に立って演奏を行う機会を多数用意しています。クリスマス・ポップスコンサートは、夏に開かれる「プロムナードコンサート」と同様、演奏学科ポピュラー音楽コースを代表するイベントのひとつ。学生たちは、ここで日頃の努力の成果を発揮するとともに、「魅せる」技術を実践的に学びます。
クリスマス・ポップスコンサートの特長は、国指定重要文化財でもある大阪市中央公会堂で行われるということ。クリスマスという特別な日に合わせて、クラシカルな雰囲気をもつ舞台の上で、温かくて華やかなパフォーマンスが繰り広げられます。「高校生のときから出演するのが夢だった」「この舞台を目標に学生生活を送ってきた」という声も多く、学生たちの憧れを集めるイベントです。
今回は、演奏学科ポピュラー音楽コースをはじめ、大阪芸術大学短期大学部メディア・芸術学科ポピュラー音楽コースなどから、13組のユニットがステージに立ちました。
コンサートのオープニングを飾ったのは、キーボードを担当する大橋真成さんが率いる「Get o Hep」です。ギターやパーカッションが演奏を始めると、赤いスパンコールのジャケットを身につけた大橋さんが颯爽と登場。舞台が一気に華やぎます。10人編成のバンドが、ブライアン・カルバートソンの「Get Up!」を熱演しました。
2番目に登場したのは、短期大学部に所属する2人。ヴォーカルを担当する宮﨑鈴々さんと、ピアノを担当する山本麻里名さんのユニット「まりりり」です。選んだ曲はaikoの「カブトムシ」。楽曲のアレンジは、教員のアドバイスを得ながら2人で行ったということ。冬の定番ポップソングを、宮﨑さんが情感豊かに歌い上げました。
3番目のユニットは、ヴォーカルの藪内みんとさんがリーダーを務める「広がる自由」。ギター、ベース、キーボードやトランペットなど、10人編成のグループです。披露されたaikoの「夢見る隙間」は、ジャジーなアレンジが特徴。多彩な楽器が奏でる重厚なサウンドに、藪内さんのパワフルな歌声がぴったり合っていました。
4番目に登場したのは、ギター専攻2年生の仲村一希さんが率いる「かずコン」。メインヴォーカルを務めるのは、1年生の村井麗奈さんです。「村井さんの歌声を聴いたときから、一緒に演奏したいと考えていた」と言う仲村さん。村井さんのソウルフルな歌声が映える楽曲「Lose Control」(福原みほ)で、観客を魅了しました。
5番目は、4年生の平岡桃佳さんがステージに立ちます。1年生のときから毎年このイベントに出演し続けてきた平岡さん。学生としてこのイベントに参加するのは、今回が最後です。ピアノを担当する大橋真成さんと「まなせとももか」を組み、高鈴の「愛してる」を歌唱。繊細な表現力で、会場を温かく包み込みました。
第1部のラストを飾るのは、山田京佳さんのユニット「メリーゴーランド」。ベース、ドラム、キーボード、サックス、フルートの5人が、ピアノの弾き語りをする山田さんを支えます。楽曲は、ゆったり聴かせるスイング調の「ロマンスをこえよう」(TOMOO)。少し低くて温かみのある声で、歌の世界を巧みに表現しました。
第2部は、27名からなる「OUA BIGBAND」の演奏で幕を開けました。楽曲は、ゴードン・グッドウィンの「A Few Good Men」。複数の楽器が束になる迫力のユニゾン、ギターやサックスの熱いソロ、会場を盛り上げるコーラスなど、ハイライトがたくさんある一曲です。オープニングにふさわしい華やかなパフォーマンスでした。
8番目には、4年生の天倉康介さんと小山俊平太さんのギターデュオ「たしなみストリート」が登場しました。2020年から活動を続けている2人。今回は、ベースとドラムを迎えた「たしなみストリートon the beat」としての出演です。ぴったりの呼吸で、天倉さんが制作したオリジナル曲「Dirty Thirty」を演奏しました。
9番目に登場したのは、幼なじみ同志の1年生デュオ「クリオネ」です。斉木羽七さんのピアノ伴奏にのせて、三田小波音さんが「白い恋人たち」(桑田佳祐)をのびやかに、ドラマチックに歌い上げました。このコンサートに1年生だけのユニットが出演するのは珍しいこと。新入生ながら堂々と舞台に立ち、実力を発揮していました。
10番目のユニットは、4年生の坪井駿斗さんが率いる5人組「Pli-Plin」です。「最後なので、今まで演奏したことがない曲に挑戦したかった」と言う坪井さん。ギターを中心に、ベース、キーボード、ドラムが複雑に絡み合うインストゥルメンタル「Handmade Cities」(Plini)を披露。重厚なハーモニーで観客を魅了しました。
11番目には、ベース担当の髙森洸成さんが率いる「Hawks」が登場。ヴォーカル、ギター、ドラム、キーボード、ピアノを含む7人が、ハイテンポで疾走感のある「ReFruition」(DEZOLVE)を披露しました。出番後に「難しい楽曲で…」と笑顔で感想を語った髙森さん。息の合った演奏で、会場の空気を明るく盛り上げました。
12番目に登場したユニットは「もちもち」。中井遥斗さんがテナーサックスを吹き、大橋真成さんがピアノの伴奏をしました。披露された「How Great Thou Art」は、静かな曲調の讃美歌です。抑揚をつけた美しいサックスの音色で、会場は一気にクリスマスムードに。心を込めた演奏で、観客の心をしっかり掴んでいました。
コンサートのトリを務めるのは、ギター担当の古賀翔大さんが率いる「コルトパイソン」です。選んだ曲は、エレキギターの音色が印象的な「Top Gun Anthem」。映画「トップガン」のサウンドトラックです。ゆったりしたテンポでどんどん盛り上がっていく壮大な楽曲を、6人が確かな技術で演奏。大きな拍手を浴びていました。
中学生のときから軽音楽部で活動していました。高校生のときにオリジナル曲をつくる機会があり、そこから作曲に関心をもち、ポピュラーコンポーザー専攻に入りました。
今年のクリスマス・ポップスコンサートでは、幼馴染である三田小波音さんとデュオを組みました。三田さんがヴォーカルで、私は編曲とピアノ伴奏担当です。三田さんはとにかく歌がうまくて、「こんな風に歌いたい」という意思がはっきりしている人。原曲を編曲していく作業は簡単ではありませんでしたが、三田さんの思いは理解できていたので、彼女のイメージに合わせてアレンジをすることは難しくなかったです。
当日、大阪市中央公会堂に集まったお客さまの中には、「普段はクラシックを聴いているけれど、今回はポップスを聴いてみようと思って来ました」という方もいらっしゃったそうです。クリスマス・ポップスコンサートには、ジャンルを超えて人と音楽をつなぐ力があると感じました。そんな舞台に立つことができて良かったです。
今回は、三田さんの魅力を引き出すような編曲と伴奏に力を入れました。もしも他の人に合わせて編曲・伴奏をしたら、まったく異なる作品が出来上がったと思います。この経験のおかげで、作曲家としての引き出しが増えました。今後は、もっといろいろな人と一緒に作曲や演奏をして、作曲家・演奏家としての幅を広げていきたいです。
9月のプロムナードコンサートに参加したとき、ピアノとヴォーカルのデュオで出演した先輩方を観て、「なんてすてきなんだろう」と衝撃を受けました。歌も演奏も雰囲気もすべて完璧で、「私もデュオで歌ってみたい!」と思いました。そこからすぐに幼馴染の斉木羽七さんに連絡して、「一緒にクリスマス・ポップスコンサートに出よう」と誘いました。斉木さんに声をかけた理由は、彼女がなにごとにもきちんと取り組む信頼できる人だと知っていたからです。
中央公会堂の大集会室は、演者と観客との距離が近く、聴いてくださる方々の思いが伝わってくるような舞台でした。私が楽曲で一番気に入っているのは、サビの後から始まる斉木さんのソロ。そこからどんどん曲が盛り上がっていき、クライマックスへと至るところが大好きです。気持ちが入ってしまって、練習中に何度も2人で泣きそうになりました。本番では、お客さまにも同じような気持ちになっていただければ、という思いで歌いました。私が歌いたいように歌える編曲と伴奏をしてくれた斉木さんには、感謝の気持ちでいっぱいです。
コンサートに参加して、同級生や先輩たちにも良い刺激を受けました。この学科の良いところは、先生方をはじめ、同級生や先輩の中に、お手本にしたい人、尊敬する人がたくさんいること。周りの人たちに学びながら、成長していきたいと思います。