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映画『まる』公開記念イベントで堂本剛さんと美術学科の学生たちがコラボアートを制作 映画『まる』公開記念イベントで堂本剛さんと美術学科の学生たちがコラボアートを制作

美術学科 / イベント
2024/10/24

「美術を楽しむ日」とされている2024年10月2日、大阪芸術大学スカイキャンパスにて映画『まる』の公開を記念したアートイベントが開催され、同作で27年ぶりに映画単独主演をつとめた堂本剛さんが出席。劇中、堂本さんが、「まる」の絵で有名になる現代美術家のアシスタント・沢田を演じたことから、このプロモーション企画が実現しました。そんな同イベントは、大阪芸術大学美術学科の学生たちが『まる』をイメージして制作した高さ2メートル、幅6メートルの巨大アートに、堂本さんが「まる」の絵を描いて完成させるというもの。同学科特任准教授の森井宏青先生は、学内での制作時「コラボレーションアートは他人を生かしながら、自分も生きる描き方が必要」と学生たちへアドバイス。その言葉通り、個性と協調性が感じられる作品が完成しました。

10月18日より全国公開の映画『まる』で27年ぶりに映画単独主演をつとめた堂本剛さん
美術学科のアトリエで、 映画『まる』をイメージした巨大アートを制作する学生たち
学生たちは、自由な発想だけではなく、コラボレーションアートというテーマも意識しながら描き進めていった

堂本剛さんが学生たちにエール「自分らしい人生を生きて」

学生たちの大きな拍手に迎えられた、堂本剛さん。イベントの司会進行を担当したFM 802のDJで、大阪芸術大学放送学科卒業生の板東さえかさんから、27年ぶりの映画単独主演について尋ねられると「久しぶりにお芝居に集中する時間をいただきました。荻上(直子)監督が脚本を書かれた『まる』という映画は奇想天外な内容が非常にチャレンジングで、難しすぎる役でした。悩みながら、久しぶりの芝居の感覚を取り戻しながら演じました」と振り返りました。


また、表現者として大切にしていることについては「僕は真剣に悩んでこなかったのかもしれません。というのも、『ただ自分を生きるだけ』という答えが出ているので。僕は音楽が好きなのですが、中でもファンクミュージックがめちゃくちゃ好きなんです。日本ではたくさんの人に聴かれるジャンルではないのですが、あえてそこに飛び込みました。自分と誰かを比べるから、誰かがマイナスに見えるだけで、実はみんなプラスなんだと僕は思っています。ファンクミュージックも『誰もが魅力的なんだよ』ということが繰り返されている音楽、だから好きなんです」と、ファンクミュージックを自身の表現方法とする理由を語りました。

映画『まる』で司会進行を担当したのは、FM 802のDJとして活躍する放送学科卒業生の板東さえかさん
「雑味を大事にしている」と語る堂本さん。「雑味=個性はピントの合わせ方次第で自分の武器になる」とコメント

そしていよいよ、学生たちが描いた巨大アートに「まる」を加える瞬間が訪れます。堂本さんは巨大アートを前にして「エネルギッシュだし、それぞれのカラーがここに反映されている。“自分”というものがここにひしめき合っている」と感嘆。そして「足さなきゃ良かったと思うことをいっぱい経験しているから。足していいのかな。ごめんね、ちょっと消しちゃうけど」と躊躇いながら、丁寧に「まる」の絵を描いていきました。


最後に堂本さんは、学生たちと一緒に記念撮影。そして学生たちの方を振り向いて、「今日は貴重な経験をさせていただいて、ありがとうございました。僕もがんばって生きていくので、みなさんもがんばって。自分の人生は1度きり。みなさんが描いてくださった絵のように、自分らしい人生を、強く、優しく生きていってください」とエールを贈りました。そんな堂本さんが主演する映画『まる』は全国の映画館で公開中です。

「まる」を塗り重ねる堂本さん「アートも音楽作りも、この辺で良いかなというラインを超えることもできる」
堂本剛さんと美術学科生たちのコラボレーションアートがついに完成
『まる』を上映しているTOHOシネマズ梅田では10月18日から2週間、堂本さんと学生のコラボレーションアートを展示
美術学科 特任准教授
森井 宏青 先生

堂本さんが学生たちの絵を前にし、その上に「まる」の絵を描くことをすごく躊躇っていらっしゃいました。私は学生たちに、その姿を目に焼き付けてほしいと感じました。それくらい、クリエイターにとって大切な光景だったように思えます。堂本さんはイベントの事前打ち合わせでも、「心が優しすぎて傷つく人は、世の中にはたくさんいる」とおっしゃっていました。「まる」を描くことで、学生が描いた絵は下地になってしまう。だからこそ、堂本さんには躊躇があったんです。「よし、最後にこの絵にサインを入れてやろう」という感覚はもちろんなく、「自分が描く『まる』、この絵のどこに存在するべきか」について心から悩んでいらっしゃった。学生たちには、そんな堂本さんの葛藤を絶対に忘れないでほしい。というのも絵の制作初期、二人の学生が真っ先にかわいいイラストのようなものを描いてくれたのですが、次の日には別の学生たちの絵の具がそこに散らばり、3日後には彼女たちの絵は抽象的な色にしか見えないものになっていたんです。他人が作ったものを消して自分の絵を上書きするというのは、ストリートアートの矛盾。つまり、自分が目立つために他人を下に見てしまうということ。制作が進むにつれて学生たちの表現からは、そういった暴力的なものが浮かび上がってきました。コラボレーションとは相手を生かしながら、自分もそこに生きるもの。私は「このままではいけない」と、最後にあらためて二人の学生に絵を描く機会を与えました。そのように共作とは本当に難しいものなんです。自分の気持ちを解放しないと表現できないのですが、一方で相手と深く関わり合い、お互いが繋がって、そして関係性を大事にする必要もある。それはベテランでもなかなかできないこと。自分の良さを出すためには、他人を犠牲にしないといけなくなる場合も出てくる。学生たちにもそういうさまざまなジレンマがあったのではないでしょうか。そういった点でも今回の制作はクリエイターとしてとても良い機会でしたし、何より堂本さんの躊躇いから学べるものは多くありました。

美術学科 2年生
古家 春奈 さん

「剛さんが『まる』を描いてこの絵は完成する」と事前に聞いていたので、最後に「まる」が加わったとき、この絵の出来上がりが実感できました。もし剛さんの「まる」がなければ、時間が経って鑑賞したとき「何かが足りない」となっていたはず。そういう意味でも最後の「まる」はすごく重要なものだと思います。またイベントでは、剛さんが、自分だからこそできる表現をずっと追求し続けていらっしゃるように映りました。俳優、音楽など幅広いジャンルで自己表現をされ、その中でもファンクミュージックに興味を持って制作していらっしゃる。「これが好きだ」というシンプルな気持ちを表現に結びつけるのは、とても難しいこと。いろんな人に、いろんな意見を言われても、それを貫く姿が尊敬できます。私は現在、自分が今後何をやりたいのか迷いがあります。2年後、社会に出たときにどんな場所が合うのか、あまりに漠然としすぎていて悩んでいるんです。美術の仕事をめざすべきか、それとも別の道を進むべきか。だからこそ、「自分はこういうことが好きで、これがやりたいんだ」という気持ちに素直でいたいです。

美術学科 2年生
松田 夏輝 さん

何もない状態から学生たちでカラフルな絵を描いていきましたが、そこに堂本剛さんの黒い「まる」が加わったことで、作品として最後に締まった印象を受けました。堂本さんはイベントで、私たちの方を向いて「人生はこれからですよ」と言葉をかけてくださいました。これまで音楽番組などで活動を拝見しており、“ザ・アーティスト”という印象がありましたが、実際にお会いするととても柔らかいお人柄で、親しみやすさも感じました。これだけ長くやっていらっしゃる方なのに、こんなに優しく私たちに接してくださるんだと驚きがありました。私は将来、どんなことがやりたいのかまだ決まっていません。大阪芸大で絵の勉強をし、もっと成長して作品を発信できるような人間になれたら一番ですが、それでも絵で食べていける人は一握り。別の道を進むのも選択肢として持っています。ただ、絵を勉強している間はとにかく自分が好きなもの描いていきたい。楽しいことをしていかないと良い絵も生まれないと思っているので、そういう意識を持って日常を過ごしたいです。何よりこの2年間、実習を通して絵も上達してきたので、まず実力を伸ばすことに専念したいです。