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「ハルカス300」学生が手がけた大型プロジェクションマッピング 「ハルカス300」学生が手がけた大型プロジェクションマッピング

アートサイエンス学科 / 産官学連携
2022/10/01

あべのハルカスの展望台「ハルカス300」で、2021年12月22日にプロジェクションマッピングの点灯式が行われました。この作品は大阪芸術大学アートサイエンス学科の学生たちが手がけたもので、クリエイティブカンパニーNAKED, INC.(ネイキッド)による指導のもと、高校生も参加した「0×0=∞プロジェクト(ゼロ×ゼロ=無限大プロジェクト)」として制作されました。点灯式には「0×0=∞プロジェクト」の講師を務めるNAKEDの川坂翔先生と、制作に参加した学生が出席しました。また2022年2月4日からは、3年生による作品も公開。

作品タイトル『未来へ昇る、希望の旅』

未来への期待感を鮮やかな映像で体現できる大型プロジェクションマッピング

プロジェクションマッピングの制作は、毎年アートサイエンス学科で行われている「0×0=∞プロジェクト」の一環で行われ、このプロジェクトはNAKED代表で本学の客員教授 村松亮太郎先生の指導のもと、学生たちが企画・演出・構成を担い、制作を行うものです。同プロジェクトでは、過去にはあべのハルカスのイベントや、大阪市中央公会堂のプロジェクションマッピング作品の発表も行ってきました。

1年生が発表した作品のタイトルは、『未来へ昇る、希望の旅』。約5分の作品に映し出されるのは「現在」「過去」「未来」の3つの世界で、SNS風のメッセージで遠隔の交流が増えた「現在」、四季折々の風景を映し出すビフォーコロナの「過去」、アフターコロナの「未来」と舞台は移り変わります。歯車が急速に回ることで時の流れが変わる演出があり、未来の世界を表現した映像では地上の水中都市、天空に浮かぶグリーンの都市、宇宙など、幻想的に繰り広げられ、最後にネオンに溢れた煌びやかなビル街とあべのハルカスが映り「未来への希望」を予感させる映像で締めくくられました。この作品を通してコロナ禍で多くの人が物理的なつながりを持ちにくくなってしまった今だからこそ、日本有数の高層ビルから日本全体に「希望の光を届けたい」という学生の思いが作品に込められています。


また、2022年2月4日に公開された3年生の作品タイトルは『未来へ輝け、希望の鐘』。ハルカス300に設置されている鐘を使用し、鳴らした人数分、希望が空に上がっていくという演出が施されています。1年生の作品と比べ3年生の作品では、作品の制作過程がより多くなっており、先のプロジェクションマッピング作品『未来へ昇る、希望の旅』のインターバルに楽しむことができるプロジェクションマッピングと連動したインタラクション作品となっています。

作品タイトル『未来へ輝け、希望の鐘』©︎naked inc.
作品タイトル『未来へ昇る、希望の旅』

昨年2021年9月からスタートしたこの作品のプロジェクトは、受講するアートサイエンス学科の学生に加え、オープンキャンパスを通じて希望した高校生もアイデア出しに参加しています。今年度は「コロナ禍におけるクリエイティブの役割」と「プロジェクションマッピングの制作手法」をテーマに、ネットを使うことで参加者全員が確認できるワークフローや、遠隔でも参加しやすい仕組みを導入した作品づくりが特長です。川坂先生はプロジェクトの取り組みについて、「プロであるNAKEDがメインで作るわけではなく、一方で学生たちがすべての制作を担うわけでもありません。プロと学生の力を融合させて、作品をつくりました」と話します。学生はストーリー設定やコンセプトづくり、映像の下地となる絵コンテを作成するなど、それぞれの力が発揮できる役割分担を行いながら制作してきたとのこと。ただ作品をつくって自己満足するのではなく、みなさんに作品を見ていただき、『素敵だな』と思ってもらうことが大切だと考えているため、『クリエイティブとは』といった心得や、作品にメッセージ性を込める大切さを伝えるよう心がけられたそうです。

点灯式の様子

地上300mの最上階から作品が誕生する瞬間に立ち会って

作品が発表される2021年12月21日の点灯式では、関係者と共に学生を代表して2名が作品の点灯に参加しました。アートサイエンス学科1年の西川さんはタイトル設定を担当「たくさんの方に未来への希望を届けたい、その一心で名付けました」。もう一人の同学科1年の高野さんは、絵コンテの作成やコンセプト設定に携わり「学生全員が真剣に取り組んでいたからこそ苦労することも多かったのですが、未来への期待感や人とのつながりの大切さが伝わる、すてきな作品になったのではないかと思っています」と話しました。

同点灯式に出席した本学の副学長 塚本英邦先生は、このプロジェクトの意義について問われると「本学は実践の学習を大切にしてきました。大学の中だけで作品づくりから発表まで行うのと、学外で制作を行いたくさんの方に見てもらうのでは、学生の成長度合いはまったく違います。こうした場所で作品を披露して、お客様にどんな顔をしてもらうのか。それを目の当たりにすることで、学生はどんどん伸びていくのです」と語りました。

あべのハルカスの展望台では、冬の夜空のもと映し出される光のアート作品の前に、たくさんの方が集まり楽しげな様子で見入っていました。大阪芸術大学から未来のクリエイターが誕生する瞬間を目の当たりにした、貴重なイベントとなりました。

アートサイエンス学科 講師/NAKED, INC.(ネイキッド)ディレクター
川坂 翔 先生

このプロジェクトを通して学生に伝えたかったのは、「作品にストーリーを込める大切さ」です。映像や絵コンテを器用に作るだけではなく、コンセプトを定めたり、起承転結のあるシナリオをつくったり、ドラマのある見せ方をしたり……そんな力を身につけることで、より多くの人に訴求できる作品が仕上がります。そんな制作のプロセスを体験してもらうことを心がけました。今回のプロジェクションマッピングは、アフターコロナや未来へのワクワク感を感じさせるような展開が待っています。未来を担う若い学生が制作したという意味でも、作品から未来への希望を感じていただけるのではないでしょうか。

アートサイエンス学科 1年生
藤原 歩加 さん

今日の点灯式で完成した作品を初めて見たのですが、NAKEDの皆さんのプロならではの技術で、想像以上に上質な作品に仕上がっていて、とても感動しました。
このプロジェクトで、私は絵コンテやシナリオの作成を担当しました。これまでの私は「いかに自分が満足できるか」という観点から作品をつくってきましたが、川坂先生の指導のもと「見ていただく方に、どれだけ満足してもらえるか」といった視点を身につけることができました。
プロジェクトで得られた最大の学びは、「お客様に楽しんでもらうには、まずは自分が楽しむ」。この精神を大切に、プロクリエイターという夢に向かって今後も励んでいきたいです。

アートサイエンス学科 1年生
葛上 佳奈 さん

「NAKEDのプロジェクトに参加したい」という思いでアートサイエンス学科に入学したので、夢が実現できてうれしいです。入学して1年目ということもあり、慣れていないパソコンの使い方などを勉強しつつ、プロジェクションマッピングの制作手法を学べて充実していました。また技術面はもちろん、メンバーとのコミュニケーションに難しさを感じることがたくさんありましたが、川坂先生の指導によってみるみるうちに良い方向に変化したのが印象深いです。この経験を通して、「みせるクリエイティブ」「どうすれば鑑賞者に伝わるのか」といったプロにとって大切な視点を得ることができたため、今後の活動に生かしていきたいです。

アートサイエンス学科 3年生
大原 空 さん

今回のプロジェクトで印象的だったのが、顔合わせから作品公開まで、3週間という圧倒的なスピード感で進んでいったことでした。学生のうちにプロならではの迅速な進行で作品づくりができたのは、今後への糧となりました。作品には、私たちのグループワークの良さが反映されていたと思います。日頃からメンバー同士で考え、アイデアを上乗せして、作っていく。その繰り返しを行うことで、作品に厚みが増していきましたし、他者の意見を受け入れて生かしていく大切さも学びました。公開前日まで修正点が生じるなど、不安な気持ちを抱えながら当日を迎えましたが、実際に作品が披露されたときは非常に感動しました

アートサイエンス学科 3年生
土居 能恵留 さん

「間違っててもいいから、自分自身で考えてアイデアを出すことが一番大事なこと」。先生がおっしゃってくださった一言です。プロジェクト中、「本当にこれでよいのか」と不安になることが多かったのですが、その言葉に救われ、やっと自分たちのアイデアに自信を持つことができました。無事完成した作品は、私が今まで携わってきたプロジェクトの中で一番規模が大きく、とてつもない達成感を味わいました。もちろん、「もっと良くできたのではないか」と改善点や反省点もありますが、これからのスキルアップに存分に生かしていきたいと思います。