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グランドオープンしたKITTE大阪の記念モニュメントを学生たちがデザイン グランドオープンしたKITTE大阪の記念モニュメントを学生たちがデザイン

デザイン学科 / 産官学連携
2024/09/18

2024年7月31日、JR大阪駅西口前に「KITTE大阪」がグランドオープンしました。「つながりのはじまり」というKITTE大阪のコンセプトを起点にグランドオープン記念モニュメントをデザインしたのは、デザイン学科教授の清水 柾行先生と学生十数名からなるプロジェクトチームです。デザインを導き出すために活用したのが、アイデアをチームで共有し発展させる集合的かつ創造的なプロセスを組み込んだ共創デザインプラットフォーム。

 KITTE大阪のオープニングセレモニーでは、報道陣のカメラの砲列の前で、学生たちの頭のなかだけにあったアイデアが質量を持ったモニュメントとして実体化したのです。約75年もの歴史を刻んだ旧大阪中央郵便局の建物の一部を配したアトリウムで巨大な水引が不思議な存在感を演出していました。

「KITTE大阪」は、JR大阪駅西口前の旧大阪中央中便局跡地に2024年3月に竣工した「JPタワー大阪」内に誕生

旧大阪中央郵便局跡地にオープンした「KITTE大阪」のグランドオープン記念セレモニー

一世紀近い歳月、大阪駅西側で人々の数知れぬメッセージを粛々とやり取りしてきた旧大阪中央郵便局の跡地に建設された「JPタワー大阪」の商業施設「KITTE大阪」。十数台の報道陣のテレビカメラの砲列の前で、そのオープニングセレモニーが幕を開けました。4階まで吹き抜けの開放感のあるアトリウムには、約75年もの歴史の面影が移設された建物の一部として残っています。その空間の主役となるように、躍動感のある姿を見せているのがグランドオープン記念モニュメント。セレモニーには、このモニュメントをデザインした清水 柾行先生とプロジェクトに参加した学生たちも出席しました。このイベントに先立つ5月に開催されたワークショップでは180名もの方々が参加して、梅田に因んだ梅結びを作りました。ワークショプで地元の人々の参加を呼びかけるのはKITTE大阪そのものがこの地に根付いた存在になることを目指しているから。そこで、様々な願いを込めて梅結びを結うワークショップを開催し、参加者や学生とKITTE大阪のテーマソングを歌うアイナ・ジ・エンドさんが作った梅結びを飾り付けたプレートを制作。セレモニーの最後には、モニュメントにカラフルな梅結びのプレートが設置されました。セレモニーにはアイナ・ジ・エンドさんとともに清水先生と学生らも参加することで、イベントに華やかな彩りを添えました。

開業記念イベントのラストを飾るセレモニーに清水先生とともに学生らも参加

開業記念モニュメントのデザインを産学連携で

2023年の7月ごろに大阪芸術大学に舞い込んだのが「KITTE大阪」のグランドオープン記念モニュメントをデザインしてほしいという日本郵政不動産株式会社を始めとした事業者グループから産学連携プロジェクトの依頼。引き受けたのは「すべてはデザイン」という考え方で横断的にデザインプロジェクトを実践してきたデザイン学科の清水 柾行先生と、学生14名からなるプロジェクトチームです。「KITTE大阪」がある梅田は、この地から旅に出る人、大阪を訪れる人、遠い地に想いを馳せて手紙を送る人など、あらゆる人、モノ、文化、想いが集まる場、つながりの起点となる特別の場所として愛されてきました。新しくスタートをきる「KITTE大阪」も、土地の記憶を大切にし、人と人のつながりを生む出会いの場として親しまれることを願って、そのコンセプトは『つながりのはじまり』です。大阪芸大に依頼があったのも、大阪に根差した大学であること、だからこそ大阪につながりのあるアイデアを提案してくれるだろうとの期待があってこそでした。

KITTE大阪のグランドオープンを華々しく告げるテープカット
日本の良さを発見し、再認識できる場所を目指す日本各地のアンテナショップでのショッピングが楽しみなKITTE大阪

集合的で創造的な共創プロセスで発想をより自由に豊かに広げていく

清水教授が日頃から実践しているのが共創を前提としたデザインワーク。それは、学生チームとともに「KITTE大阪」のグランドオープン記念モニュメントのデザインに挑む場合でも同様です。個々人で考えてきたアイデアを出し合うというのは通常どおり。大きく違うのはここから。ブレーンストーミングの場に出されたアイデアはチームの共有財産と捉え、新たな視点に気づいたり、アレンジしたり、組み合わせて発展させていくのもメンバーの自由という集合的で創造的なスタンスが清水先生の共創モデルのプロジェクトの進め方。アイデアをプロジェクト全体の共有財産と考えることで、1人の中の視点も拡がり発想も膨らんでいくと清水先生は考えているのです。その共創アプローチは、「著名アーティストの作品を派手にお披露目して終わり、という従来の手法ではなく、その地域に暮らす人々にも施設づくりに協力してほしい」という日本郵政不動産株式会社 大阪営業所の寺﨑さん•垣内さんの想いとも通ずるものがありました。

頭に浮かんだアイデアを形にして意見を交わすことで、発想がより豊かに広がっていく

9月のオリエンテーションから12月までで200以上のアイデアが飛び交う

参加メンバーを十数名に絞り込み、オリエンテーションに臨んだのが9月のこと。そこからアイデアをプレゼンテーションする12月下旬まで3か月の間、毎週のようにミーティングが繰り返されました。「つながりのはじまり」という「KITTE大阪」のコンセプト、大阪駅という関西きってのハブターミナルに位置すること、そして旧大阪中央郵便局跡地という歴史性。また日本の伝統文化の再発見や、誰にとってうれしいのか、どんなメッセージが今相応しいのかなど、記念モニュメントに取り入れるべき様々なファクターを丁寧に観察し、そこから発想を膨らませていきます。このプロセスを何度となく繰り返すことでコアとなる考え方を抽出していきます。プレゼンテーションまでに学生たちが生み出したアイデアは総計で200以上にものぼります。そこから、「KITTE大阪」のコンセプトとの整合性、期間限定のグランドオープン記念モニュメントとしての実現性や安全性、予算など様々なファクターを加味しながら、アイデアは絞り込まれていきます。

コンセプトを飾らない言葉でストレートに伝えられるのは、学生ら同士で共有しブラッシュアップしてきたアイデアだから
それぞれのアイデアごとに地域の人々を巻き込んで愛着を持ってもらうためのワークショップを提案

最終プレゼンで「KITTE大阪」に向けて提案されたアイデアとは

12月22日にプレゼンテーションされたアイデアは6つ。それぞれのアイデアはモニュメントのデザインに加えて、地域の人々を巻き込み、親しみを持ってもらうためのワークショップとともに提案されました。例えば、「結びーつながりがはじまり、そして結ぶ」をコンセプトに、水引をモチーフにデザインされたDESIGN : Aでは、来場者に、梅田の「梅」にちなんだ梅結びを作ってもらうワークショップが提案されました。DESIGN : Cではメモリーギフトというタイトルに沿って、思い出の写真を投稿してもらい、その写真をグランドオープン記念モニュメントに反映していくというアイデア。新しい「KITTE大阪」という商業施設のオープニングを祝うとともに、来場するお客様に愛着を持ってもらうためにはどうすればいいのかを考えに考え抜いたことがよく分かる用意周到な提案でした。

どのアイデアもプレゼンテーションに出席した関係者から大きな称賛を受けました。

開業イベントに向け、また走り出したプロジェクトチーム

プレゼンテーションを受けて、「KITTE大阪」の開発事業者各社や日本郵政不動産株式会社、オープニングセレモニーをプロデュースする株式会社電通ライブをはじめとした関係者が別室にて協議。その結果として選ばれたのは、水引をモチーフにしたDESIGN : Aでした。実はDESIGN : Aはプロジェクト開始当初からブラッシュアップを重ねてきたメンバーにとっても愛着のあるアイデア。グランドオープンを楽しみにしているプロジェクトメンバーも納得できる結果となりました。

プレゼンテーションの1か月後、プロジェクトメンバーのもとを訪れた電通ライブのプロデューサーの姿が見られました。その訪問の議題は『結び』をコンセプトにしたDESIGN : Aに決定したが、ほかのアイデアも捨てがたいので、さらなるブラッシュアップをお願いしたい」という、さらなる協力を求める依頼でした。プロジェクトチームの面々は協力を快諾。そこから7/31のグランドオープンに向けて、プロジェクトチームのみんなは、カラー提案など重要なファクターを解決するために、さらなる提案を行い、7/31のオープニングセレモニーでは盛大にお披露目されたのです。

デザイン学科グラフィックデザインコース3年生
日垣 乃彩 さん

今回のプロジェクトは、授業が終わった後に行う課外活動。だから、放課後という限られた時間のなかで、みんなにアイデアの本質をわかりやすく伝えるためのアイデアシートのまとめ方に力を注ぎました。もう一つは発想の起点がどこにあるのかをミーティングのなかで明快に説明すること。そして、今回のプロジェクトを通じて思いついたことをラフな形でもいいから形にしてみることへのハードルが下がったのでは、と思います。「思いついたら、ラフなアイデアでも、まず提案」です(笑)。色々なアイデアをみんなで共有し発展させてから、実現可能性や「KITTE大阪」のコンセプトと突き合わせて収束させていくプロセスを繰り返すことで、グランドオープン記念モニュメントの最終的なイメージへの解像度がどんどん上がっていくのを感じました。アイデアを出し切ったうえで、プレゼンテーションに臨めたのは本当に貴重な経験だったと思います。

デザイン学科デザインプロデュースコース3年生
太子 果穂 さん

授業のなかでプレゼンテーションをする機会が多いのが、私が所属するデザインプロデュースコース。今回は企業の方々に向けて行うプレゼンテーションだけに、いつもの何倍も緊張しました。開始時間が近づくにつれ、どんどん顔色が悪くなっていく私を見て、幼なじみの友人が爆笑してしまうほどに(笑)。そんな友人と一緒に笑い合ってリラックスできたせいか、いつもはかなり早口で喋ってしまう私も本番では落ち着いてゆっくり話すことができました。本当はプレゼンで話すべき内容が一部飛んでしまったんですけどね(笑)。企業の方からの質問を受けてフォローすることができたので結果オーライです。様々な企業の方々を前に提案するのは、授業では決してできない経験。緊張しながらも最後までプレゼンテーションを全うできたことは、今回のプロジェクトに参加したからこその最大の収穫かもしれません。

デザイン学科デジタルメディアコース4年生
今井 凛 さん

プロジェクトが始まった当初は、旧大阪中央郵便局跡地という歴史性から切手やポストといったモチーフにしたアイデアが多かったように思います。それは郵便という制度が人と人とがコミュニケーションする「きっかけ=はじまり」になるものだから。でも、ミーティングを繰り返すうちに、「KITTE大阪」のコンセプト「つながりのはじまり」の「つながり」に考え方の重点と方向性が移っていきました。そのころに出てきたのが、DESIGN : A「結びーつながりがはじまり、そして結ぶ」の原点となるアイデア。何度もミーティングを繰り返すなかで、消えていったアイデアもありました。アイデアの生存競争を勝ち抜いて最後まで生き残ったDESIGN : Aが最終案に選ばれたのはうれしいですね。プロジェクトメンバー誰しも「妥当」だと、納得できる結果でした。グランドオープンセレモニーは、みんなの頭のなかにあったヴァーチャルなアイデアがリアルになった瞬間でした。