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工芸のちから2021 工芸のちから2021

工芸学科
2021/09/06

2021年6月30日~7月6日の1週間にわたり、「工芸のちから2021」が、あべのハルカス近鉄本店で開催されました。本来は工芸学科創設50周年記念行事として、2020年に大規模な展覧会や行事を予定していましたが、コロナ禍により残念ながら見送ることに。今回はその一環として、卒業生45人による作品の展示販売会が行われ、大勢の来場者でにぎわいました。

工芸学科卒業生の作品を百貨店で展示販売

この展覧会は、2016年にガラス工芸コースが新進作家ガラス工芸展を開催したことに始まり、2017年には陶芸コース、2019年にはさらに金属工芸コースとテキスタイル・染織コースが加わり、工芸学科4コースによる「工芸のちから」展へと発展しました。

今回の「工芸のちから2021」には、この春卒業したばかりの作家も含め幅広い年代の45人が参加。個々のブースに食器や雑貨、アクセサリー、オブジェ、ファッションなど多彩な作品が並びました。多くのお客様が来場され、売上点数683点、売上合計金額約357万円と、予想を上回る充実した展覧会となりました。


回を重ねるごとに、この展示を目当てに足を運ぶお客様が増え、作家との会話を楽しまれる方も多数。今後の活躍が期待される新進気鋭の作家にとって、新たなファンを獲得するとともに、様々なお客様の生の声をうかがう貴重な経験になりました。

期間中には工芸学科に在学中の学生も多数見学に訪れ、先輩作家に熱心に質問する姿も見られました。工芸学科で培われてきたものづくりへの思いは、次の世代へも脈々と受け継がれています。


工芸学科 学科長
山野宏先生

「工芸のちから」は、ガラス工芸コースで指導されていた故内村由紀先生の「卒業生たちの制作活動を応援したい」との思いからスタートし、工芸学科に波紋のように広がってきた展覧会です。今回は長谷川政弘先生がその思いを引き継ぎ、工芸学科創設50周年記念事業の一つとして開催されました。
異なる素材を扱う4コースの個性豊かな作品が集った今回の展示は、変化に富みながらもよくまとめられ、見応えのある内容でした。訪れる方にも、実際に作品にふれて工芸の素晴らしさや醍醐味を体感していただけたことでしょう。
学科をあげてのこの大規模な催しは、卒業後に一人で制作を続ける作家にとって、互いに交流し、触発しあって視野を広げる機会になります。仲間や恩師との再会や新たな出会い、啓蒙の場ともなるでしょう。来年からは卒業生有志が自主的に企画・運営し、工芸学科がバックアップする形で継続していければと考えています。この交流の輪がこれからも大きく広がっていくよう願っています。

「工芸のちから2021」実行委員  工芸学科 教授
長谷川政弘先生

工芸学科創設50周年という記念の年から一年遅れとなりましたが、コロナ禍の厳しい状況下で「工芸のちから2021」を無事開催できて喜ばしい限りです。盛況のうちに終了し、売上高も前回を上回ったのは、この展覧会が定着しはじめ、作り手もお客様の求める作品を追求したからこその成果でしょう。
作品が対価と交換に自分の手から離れるという経験は、作家としての責任と自信につながります。お客様と様々な会話を交わすことで、今後の改善点や次の制作のヒントを考えるきっかけにもなったことと思います。
今回出展した作家は、すでに工芸家として自立している人、工房に勤めている人、他の仕事と制作を両立する人などスタイルも様々。「どんな環境でもモノづくりを続ける」という強い信念を持って、これからも制作に取り組んでほしいと思います。

<作家コメント>

金属工芸コース 2019年修士課程修了
川田奈央さん

大学を卒業してから本格的な展覧会に参加するのはこれが初めて。自分の工房の設立に向けて準備中の私にとって、作家活動の記念すべき第一歩になりました。卒業後もこのような形で大学に支援していただけるのはありがたいですね。
今回は、お客様が気軽に購入していただきやすい小ぶりなアクセサリーを中心に出品しました。色々なお客様から声をかけていただき、うれしかったです。作品をほめていただくだけでなく、ご指摘やご意見をいただくと「次はこうしよう」「こんなものを作りたい」と意欲がわいて、たくさんの刺激を受けました。

陶芸コース 2020年卒業
松森洋駆さん

昨年春に大学を卒業後、工芸学科の副手として勤務しながら作品制作を続けています。先輩方の活躍に感銘を受けた「工芸のちから」展に、今回初めて参加することになり、光栄な中にも身が引き締まる思いで一生懸命準備をしました。
私の制作テーマは「流動」。細いひも状の泥で構成する形状や、釉薬をバーナーで炙ることで生まれる美しい色にこだわりながら、お客様に手に取っていただきやすい作品をめざしました。お客様の感想や、先生・先輩のアドバイスをいただいて勉強になった点も多く、この経験を陶芸家としての成長につなげたいと思います。

ガラス工芸コース 2012年修士課程修了
新野恭平さん

「工芸のちから」の前身であるガラス工芸展から参加し、酸素バーナーを使ったガラス作品を出品。毎回人気のあるファンタジー系の雑貨に加えて、今回初めて出品した銃や剣など大き目のオブジェも好評でした。作品を購入していただくには作家の人間性を伝えることも重要。前回来られたお客様にも楽しんでいただけるよう、展示期間中は毎日会場に立ち、積極的なコミュニケーションを心がけました。
現在は自分の工房を持ち、ガラス教室や制作を行っています。目標を常に口にして行動することで道は開けるもの。後輩の皆さんにも頑張ってほしいですね。

テキスタイル・染織コース 2017年博士課程修了
梅崎瞳さん

染色に魅せられて型染め技法を研究。今は制作活動のかたわら、きものの専門学校で染色指導も行っています。「工芸のちから」への参加は2回目。初めは商業的な作品づくりに対するとまどいがありましたが、手探りしながら制作してきました。
今回は初夏の花をデザインしたスカーフや、可愛い動物柄のエコバッグを出品。少し派手な色のものが一番に売れるなど、新しい発見もありました。下絵を描き、一枚型を彫って染めてと手間をかけた作品だからこそ、お客様に気に入っていただき、使っていただいて、少しでも手仕事の良さを感じてもらえたらうれしいです。