今回の「工芸のちから」は、芸術情報センターで開催されました。工芸学科の二代目学科長を務めた、故本野東一教授の「Color No.5」が展示ホールのエントランスすぐに据えられました。差し向かいには、現学科長の山野宏教授の「Drawing on the Vessel」が展示されています。自然のなかに見られる一瞬をガラスに閉じ込めたような山野先生の作品と、躍動感を表現した本野先生の作品が好一対をなしています。会場の奥へと歩みを進めていくと、陶とガラスを組み合わせた陶芸コースの田嶋悦子教授の作品、そして金属工芸コースの長谷川政弘教授の力強い造形と葉脈の描写が美しいロータスのマケットと、小野山和代教授のテキスタイル作品が続きます。展示壁を回り込んだ控えめな位置に展示してあったのが、前田昭博客員教授の手でふくよかで柔らく形作られた「白瓷捻面取壺」。伝統にのっとった精緻な細工から、視覚を直接呼び覚ますようなオブジェまで工芸学科という範疇に収まりきらない多彩な作品が展示されました。
銀澄を溶着した吹きガラスの表面にイメージを描くことで静謐な世界観を生み出した山野宏教授のDrawing on the Vessel