大阪を代表するラジオ局であるFM802と、総合芸術大学ならではの多面的な方向からイベントプロデュースを学べる大阪芸術大学の芸術計画学科がコラボレーション!
幅広い層から絶大な支持を得る人気バンド「flumpool」を中心とする、オンラインのライブイベント「FM802 Live pool ON LINE!!」(以下「Live pool」)の配信に向け、運営スタッフの一員として携わった学生たちの取り組みを紹介します。
1974年の設立以来、さまざまな芸術分野に精通し、生活とアートの橋渡しを行う人材を養成してきた芸術計画学科。
「愛・地球博」や「全国菓子大博覧会」など、数多くの大型イベントをプロデューサーとして手掛けた村上敬造学科長の着任以後、アートや音楽、町おこしなどを人々に届けるイベントプロデューサーの育成をより明確化し、現在では、さまざまな催事にスタッフとして携わる「プロジェクト演習」で、プロの現場を体感するというカリキュラムが実践されています。
これまで、学内の卒業制作展や「OSAKA光のルネサンス」、飲酒運転撲滅を推進するライブ「LIVE SDD」など、さまざまなイベントで実習を行ってきました。
2020年5月からZoomなどを用いたオンライン授業が開始され、当初、カリキュラムとして計画されていたイベントは大半が中止を余儀なくされました。
村上学科長と如南幸子先生が受け持つプロジェクト演習のイベントチームでも状況を鑑みて「仮想の音楽フェスを計画する」という授業がスタート。
2年生、3年生合わせて25名のチームが、さまざまな意見を交わし合いますが、明確なゴールが見えない中でのイベント立案は、オンラインでのやり取りの難しさやモチベーションの維持など、さまざまな壁が立ちはだかり、なかなかスムーズには進みませんでした。
このような状況の中、かねてよりライブイベント「HIGH! HIGH! HIGH! 」での運営補助などで交流のありましたFM802から芸術計画学科とのコラボレーション企画の話があり、思いがけないチャンスが到来しました。
今年3月に開催が予定されるも、これまた新型コロナウイルスの影響で延期となっていた、幅広い層から支持を得る人気バンド「flumpool」を中心としたライブイベント「FM802 Live pool」が、8月25日に無観客でのオンライン配信が決定。芸術計画学科は、「学生ならではの方法でこのライブに広報として携わってほしい」とFM802から依頼され、当初、仮想だった音楽フェス計画は一気に現実味を帯び、学生たちの熱意が集結しました。
この配信ライブに対する取り組み方について、チーム内ではさまざまな議論がかわされ、学生たちは、これまで実習で参加したイベントなどを振り返りながら、芸術計画学科ならではの参加の仕方を模索しました。
さまざまな意見が出された結果、アイデアとして提示されたのは、学内を対象とした広報活動。flumpoolをはじめとした出演アーティストたちのライブを未体験の人々にも広く見てもらう、そしてFM802と若者たちとの新たな接点を作ることを目的とし、大阪芸術大学の学生から100人のモニターを募集。配信ライブの感想を答えるためのアンケートや回答者への特典の作成、フライヤー・ポスターの制作、活動をアピールするためFM802の番組へも出演するなど、規模こそ限定的ですが、プロの現場と比べても遜色のない本格的なスキームが形成されました。
動き始めた学生たちは、オンライン配信にはどのようなプラットフォームがあるかなど、基礎段階から学び初め、7月10日にはFM802のスタッフがオンラインでイベント概要などを説明するZoom授業を実施。
モニターの募集は、夏季休暇で直接学生たちと顔を合わせられない状況に苦戦するも、Twitterを主としたSNSを駆使し、3週間後には予定していた100人のモニターを確保。みごと芸大生ネットワークを構築することができました。
「Live pool」における立ち位置、携わり方など芸術計画学科としての骨子が固まったことから、学外での広報活動もスタートしました。7月22日には、FM802の人気番組「ROCK KIDS 802」内の1コーナー「大阪芸術大学MY REQUEST」に2年生のチーフである胡谷さんと3年生のチーフである杉本さんが出演。「芸術計画学科みんなの思いを持っていくつもりで、みんなの代表としてお話させてもらいました。本当に貴重な経験かつ責任重大で、もうめちゃくちゃ緊張しました」と、本イベントにおける芸術計画学科の役割や意気込みについて語りました。
なお、この「大阪芸術大学MY REQUEST」でアシスタントDJを担当している板東さえかさんは、大阪芸術大学の放送学科出身。エンタメ業界に携わる先輩として「Live pool」の広報に勤しむ学生たちを温かく応援していました。
「学生の頃って、こういうイベントに参加する機会があったとしても、躊躇してしまったりして、なかなか声を上げて参加するのが難しいんですよね。でも今回、番組に出演してくれた芸術計画学科のみなさんからは、自分たちで楽しんでいこう!という姿勢が伝わってきて、本当に頼もしいなと思いました。ラジオの生放送も初めてなのに、しっかり自分の思いを語ってくれて素晴らしかったです。それにしても、このカリキュラム、ライブ運営を勉強して単位までもらえるなんて羨ましすぎます!(笑) 私も学生だったら絶対に受講したかったですね〜」(板東さん)
7月24日には、今回の配信ライブの総指揮を担当するFM802の編成副部長・今江元紀プロデューサーが特別講義のために来校。「Live pool」が起ち上げられた経緯をはじめ、コロナ禍における配信ライブのあり方を中心に講義を展開し、メディアやアーティストの活動とのリンク、視聴者の誘導、マーケットの流れなど、プロの目からみた音楽業界の現況を詳細に解説しました。
「機材などテクニカルな面ではなく、僕らがどのような人や会社と関わりながら仕事をしているかなど、プロセスの方をメインに知ってもらえるのが大学のカリキュラムとして良いなと思います」という今江氏。
芸術計画学科の取り組みに対しては、大学生100人という、通常であれば手が届きにくい層へのプロモーション、マーケット開拓に期待を込め、学生たちを鼓舞しました。
「今回の取り組みを通じ、イベント運営に対するみなさんの情熱がありありと伝わってきました。学生の中には、漠然とフェスや音楽イベントに携わる仕事に就きたいという人もいると思います。プロデューサーやプロモーター、エンジニア、演出など、職種はさまざまですが、どういうキャリアを積めばそこに行けるのか、このカリキュラムである程度伝えられたかな。僕らとしてもFM802のやっていることを知ってもらえるチャンスになったので、今後も機会があれば、ぜひ、またコラボレーションさせていただきたいです」(今江プロデューサー)
大学内での作業が進められる中、7月25日には、「Live pool」の主役であるflumpoolのボーカル・山村隆太氏へのインタビューが行われました。
FM802の会議室にて行われたインタビューは、3年生の杉本さん、日吉さんが担当。インタビュー初体験で緊張する学生たちをサポートすべく、DJ板東さえかさんも参加し、今回の配信ライブにかける山村氏の意気込みを聞き出しました。
また、学生時代の思い出話や、2015年にワンマンライブを行った大泉緑地、ストリートライブを行っていた天王寺などでのエピソードも飛び出し、ローカルな話題に花が咲く場面も。
終盤、新型コロナウイルスの影響でオンライン授業を余儀なくされている学生たちについても話題が及び、山村氏は、「学生のみなさんにとっての1、2年は本当に大事。その時間を奪われる重みは、35歳の自分とは全然違うとは思うのですが、どうか腐らずに頑張って欲しい」とエール。温かな山村氏の人柄に触れ、杉本さん、日吉さんもイベント成功に向けての決意を新たにしました。
インタビュー後は、山村氏がDJを担当する番組「FM802 Radio Fields」に特別出演。前回の「大阪芸術大学MY REQUEST」に続き、「Live pool」における芸術計画学科の取り組みをアピールしました。
インタビュー全編はこちらから
FM802 Live pool ON LINE!! SPECIAL INTERVIEW
https://funky802.com/interview/202008/livepool.php
山村隆太氏のインタビューからちょうど1ヶ月。配信ライブ「Live pool」は、本番の日を迎えました。
100人のモニターへの伝達事項など、まだ作業は残っていますが、学生たちが夏季休暇もいとわず打ち込んだ作業は、いったんここでひと区切りを迎えます。
会場であるZepp Osaka Baysideも、いつもならば観客であふれかえるところですが、無観客配信のため、フロアにいるのは撮影クルーや運営スタッフのみ。学生たちも感染症対策のため、3年生、2年生の中から代表で5名が参加しました。
「Live pool」は、もともと、FM802でレギュラー番組「FM802 Radio Fields」を担当する山村氏と同局が、よりつながりを深めようと企画されたイベント。
KEYTALK、Novelbright、緑黄色社会など、今、人気急上昇中の若手バンドたちがflumpoolを慕って一堂に介するということもあり、3月の時点ですでに大きな話題になっていましたが、開催延期となっていた5ヶ月の間もその熱は冷めることがなく、期待値が最大限まで高まる中、開演の時刻を迎えました。
「過剰な演出はせず、アーティストのありのままの姿を伝えたい」という今江氏のこだわりを体現するように、ライブ本編では、エネルギッシュなステージをカメラに収めながら進行。転換時にはテラスでアーティストのトークや弾き語りライブも行われるという趣向で視聴者を楽しませました。
熱い演奏が繰り広げられる中、学生たちはスマートフォンで目の前のステージと配信を見比べながら状況をチェック。チーム内で連絡を取り合うなど、本番中も作業にあたっていました。
18時30分に開演したライブは、4組のライブに加えアンコールでのセッションも行われるなど、約3時間という盛り沢山な内容に。視聴者数は約1700人に及ぶなど、配信ライブでは異例とも言える記録を打ち出し、Twitterのトレンドにも「flumpool」がランクインするなど、反響の大きさを伺わせました。
「Live pool」の配信から1週間が経ち、FM802では、「大阪芸術大学MY REQUEST」で今回のイベントを振り返る機会が設けられ、3年生から杉本さん、2年生から畑さんが出演。当日の配信や、そこに至るまでの感想を噛み締めながら語りました。
この時点では、まだアンケートの集計途中でしたが、「4バンドとも初めて見て、とても興味が湧いた」「コロナが収束したら生の現場を体感したい」など、好評ぶりを示す感想が数多く寄せられ、学生たちも一安心。
チームを導き続けてきた如南先生は、今後の学生たちの動向についてさらなる期待を寄せています。
「予想外の事態の中で始まった今回のカリキュラムですが、学生たちは自分から積極的に意見を出して、この配信ライブを成功させるために頑張ってくれました。イベントというのは、机の上で企画を考えているだけでなく、関連する企業とのやり取りなど、実際の現場を体験してこそ学ぶことができると思います」(如南先生)
3年生と2年生の強力な連携により、わずか2ヶ月という短期間ながら、FM802と連携しながら、プロさながらのライブ広報・運営活動を展開したチームメンバーたち。今後もイベント事業への参加など、経験を積み上げながらプロデューサーへの道を歩み続けることでしょう。