第45回オペラ公演『氷山ルリの大航海』 第45回オペラ公演『氷山ルリの大航海』
大阪芸術大学の第45回オペラ公演『氷山ルリの大航海』が、2024年3月8日、兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホールにて行われました。本学客員教授でもあられる高円宮妃久子殿下原作の絵本をもとに誕生したオペラを、5年ぶりに再演。演奏学科を中心に多くの学科がコラボレーションし、さらにバージョンアップした内容で、大阪芸術大学ならではの総合芸術を披露しました。
大阪芸術大学のオリジナルオペラがさらに進化
『氷山ルリの大航海』は、2006年のミュージカル化を経て、2019年にオペラ版として初演されました。高円宮妃久子殿下をお迎えして5年ぶりの再演となった今回は、歌や演奏、ダンス、演出などあらゆる面で大幅にバージョンアップされ、いっそう見応えのある内容に進化。演奏学科をはじめ舞台芸術学科、音楽学科、放送学科の学生たちが参加し、アートサイエンス学科によるプロジェクションマッピングも加わって、壮大なスケールの舞台が繰り広げられました。
演出・台本・作詞を手がけたのは、舞台芸術学科長の浜畑賢吉先生。「学科の枠を超え、大学をあげて創りあげたオペラで、私にとっても我が子のように大切な作品。学生たちの水準も一段と上がって、音楽や演技が高い完成度で融合し、素晴らしい仕上がりになりました」と熱い思いを語ります。
大自然の大切さ、友情がもたらす力を、多学科のコラボで描く
会場となった兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホールは、世界レベルのオーケストラやオペラの公演も行われる名ホール。大阪芸術大学管弦楽団がスタンバイするオーケストラ・ピットに、国際的マエストロで演奏学科教授の大友直人先生が登場し、雄大な序曲を奏で始めます。幻想的なプロジェクションマッピングが物語の世界へと誘う中、浜畑賢吉先生の生ナレーションで幕が上がりました。
主人公は、北極で生まれた氷山のルリ。氷が次々と溶けていく原因を探るため、仲間と一緒に南極へと旅をする中で、様々な生き物たちとふれあい、かけがえのない自然や友情の大切さを知っていきます。ルリや仲間たちが高らかに歌い上げるアリア、コーラスの迫力あふれる歌声、そしてダンサーたちのキレのある動きで、会場を埋め尽くす観客を惹き込んでいきました。
このオペラでは、演奏学科で声楽を専攻する学生がダンスをし、舞台芸術学科でミュージカルやダンスを学ぶ学生がマイクを通さない生の声で歌い、また音楽学科や放送学科を含む4学科の学生たちが合唱に参加。専攻分野のみならず多様な芸術を体験して学べる大阪芸術大学らしさが存分に発揮される舞台となりました。新たなチャレンジを通じて成長していく若者たちの姿が、作品のストーリーと重なります。
全体の演技指導にあたった舞台芸術学科客員教授の森以鶴美先生は「“実(じつ)”のある演技」の大切さを説き、劇団四季などでも活躍した経験をもとに舞台人の心構えも伝授。「一人ひとりが自分の強みを伸ばしながら成長してくれました。この経験を次のステップへの糧にしてほしい」と学生たちに期待をかけます。
プロジェクションマッピング制作を監修したのは、NAKED.INC(ネイキッド)のメンバーでアートサイエンス学科講師の川坂翔先生と同学科卒業生の渡邊拓真さん。「舞台の映像は、物語や場面のテーマを咀嚼してコンセプトを定めるとともに、生身の演者との調和を図ることが重要。学生の技術レベルも年々向上し、力の入った作品になりました」。
フィナーレは、冒険を終えてまた新たな旅へと向かうルリたちを送りだすテーマ曲「旅立つ若者へ」。客席から大きな拍手が贈られ、学生たちは感動に包まれながら最高の笑顔を見せていました。
作品統括を務め、ソリストとしても出演した演奏学科長の三原剛先生は「一大学がここまでのスケールでオリジナルオペラに取り組むのは他に例を見ないこと。大阪芸術大学の宝として、世界に誇れるような作品に育てていきたいと思います」と、今後に向けた確かな手応えと抱負を語りました。
私は大学入学後に本格的に声楽を学び始めました。何度か舞台に立つ機会はあったものの、オーディションで主人公のルリ役に決まった時は、不安の方が大きかったです。少しずつ納得のいくパフォーマンスができるようになったのは、プロとして第一線で活躍される先生方から親身に指導していただいたおかげ。最初はルリと自分との共通点が見いだせなくて悩みましたが、先生の「ありのままの自分自身でいい」というアドバイスで、スッと歌や演技に入れるように。またミュージカルやダンス専攻の仲間と一緒に練習する中で、ちょっとした指先の動きでも演技が変わることがわかったり、舞台にかける情熱に感化されたり、たくさんの発見がありました。
生まれたての氷山であるルリは、自分を犠牲にしてでも他者を思う優しさを持ち、初めて見る自然の美しさや生き物に目を輝かせるキャラクター。原作の絵本や台本を繰り返し読み、雄大な自然の情景を目の前に描きながら演じました。1年間を通して役に向き合い、「みんなで作品を作っていこう」と励まし合ううちに、ルリのように明るく前向きに物事に取り組めるようになり、自分自身も大きく成長できたと思います。
オペラというと敷居が高いイメージですが、この作品は可愛いダンスなども見所で、幅広い年代の方に楽しんでいただけます。卒業後は音楽の教員になるのが目標。自分が出演した舞台の映像を生徒に見せたり、経験を話したりして、音楽の楽しさを伝えていきたいです。
今回僕が演じた北極ギツネのオーシャンは、素直になれず斜に構えてしまう役柄。ちょっと自分と似た所もあるのですが、セリフを一つ一つ体に落とし込み、腑に落ちた状態で語るのは難しかったです。場面ごとに感情の変化としゃべり方を分析し、メインキャスト3人で相談し合って舞台上での動きも工夫。歌詞がクリアに響くよう口の開け方や子音の立て方にも気を配り、古典的なオペラとはまた違う表現を追求して、自分の引き出しが増えました。
大学在学中にはフェスティバルホールやザ・シンフォニーホールなど名だたるホールで歌わせていただき、昨年のオペラ公演では今回と同じ兵庫県立芸術文化センターで『魔笛』のパパゲーノを演じました。特にこの会場はスケールが大きいので、客席全体に届くよう声をしっかりと張らなければならず、緊張感もひとしお。学生のうちにこんな大舞台を何度も体験できたのは大変ありがたく、自分にとって大きな財産になっています。
現在は大学院に在籍し、プロの声楽家を志して音楽の学びを深めているところです。本当に歌いたい曲を歌うためには、まだまだ技術も磨き、コンクールなどの実績も着実に積んでいかなければならないと考えています。ずっと師事している憧れの三原剛先生の背中を追いかけ、いつか追い越す日を夢見て、これからもさらに努力し続けます。
浜畑賢吉先生にこの作品の前回公演の映像を見せていただいて、双子のコウノトリ「イビスとスターク」が大好きになり、オーディションでイビス役を射止めました。場を盛り上げて物語を進行する狂言回し的な役で、自由な動きが求められるので、スターク役の大森さんとふたりで試行錯誤。考えすぎて壁にぶつかり、先生の叱咤激励に落ち込んだこともありましたが、それが迷いを吹っ切るきっかけになって、思い切り演じられるようになりました。
私にとって初めての学外公演で、しかもこんな立派なホールで大勢のお客様に見ていただけるなんて、本当にワクワクでいっぱい。オーケストラとも初めて共演し、大友直人先生の指揮の動きや表情で音楽のスケールがぐんと広がっていくのに圧倒されました。生演奏の迫力で私たちキャストのパワーもどんどん引き出されて、本当にすごい体験ができたと思います。
舞台芸術学科ミュージカルコースは、歌もダンスも演技も総合的に学べるのが魅力。福島県出身の私は東京の大学の方が近いのですが、カリキュラムをじっくり検討して進学先を決めました。プロの先生方に何でも質問できるアットホームな環境で、授業で教わった理論や技術が、今回の舞台でもとても役に立っています。楽しく学びながら実力をつけ、今後は色々な舞台のオーディションにも積極的にチャレンジしたいです。
私はコウノトリのスターク役として、イビス役の田中さんと一緒に双子の兄弟を演じました。自分たちで動きを考えるのは、大変だけどやりがいも大きく、「その場の空気を感じながら演じる」「自信を持ってやり切る」など、先生から教わったことがしっかり身についたように思います。何よりも浜畑賢吉先生、三原剛先生、大友直人先生という演劇界や音楽界のレジェンド的な先生方と一緒に舞台に立つことができたのは、本当に嬉しく光栄なことでした。ミュージカルとオペラの違いを肌で感じ、声楽での歌い方や間の取り方を学べたのも勉強になりました。
自然環境に関する問題を自分事としてとらえ、「もっと地球を大切にしなければ」と真剣に思うようになったのも、この作品の世界の中に自分が実際に入ることができたから。そんな気持ちをお客様に伝えようと強く念じながら演じたつもりです。
私は幼い頃からバレエやダンスを習い、将来はミュージカルの本場ブロードウェイに立ちたいと憧れてきました。大阪芸大には個性豊かなプロの先生がいること、卒業後にブロードウェイで活躍されている先輩もいると知ったのが、入学の決め手です。また多くの学科があって、いろいろな専門分野の話を聞けたり一緒に作品を作ったりできるのも素敵なところ。ここは私にとっているだけで楽しくて、ずっといたいと思える場所なんです。