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今、多くの才能が、間違いなく「笑い」の周囲に集まっている。芸人は、舞台やバラエティのひな壇から飛び出し、TVのニュースショーのMCとなり、映画監督、脚本、作家、そして絵画や造形などのアート作品まで、まさに垣根を超えて、ボーダレスに活躍する範囲を拡げている。それは、SNSや動画サイトを通じて国内そして海外まで広がり、芸人サイドからだけではなく、さまざまなジャンルのアーティストたちや、公共機関さえ「笑い」というコミュニケーションに、「笑い」を生み出す才能に、何かを期待し、なんらかの関係を持とうとしている社会現象のようだ。O Plusは、今、大きな過渡期を迎えている「笑い」を、そのど真ん中から探ってみようと考えた。「笑い」最前線の現場にいる彼らや彼女たちは、今何を考えて「笑い」をつくろうとしているのか。「笑い」を生活の中に溶け込ませている世代は、これからどうその関係を育てようとしているのか。そう、今ボーダレスに拡がる「笑い」をアート目線で見ていくと、相当面白い未来が見えてくる!
Photographs: Naoki Ishizaka
Styling: TAKAO
Hair & Makeup: Hiroyuki Sumide
Text: Asami Okada
2019年、史上最高得点で「M-1グランプリ」の王者となったミルクボーイ。松本人志に「行ったり来たり漫才」と評されたしゃべくり漫才の形は、大阪芸術大学落研時代には、すでに原型ができていたそうだ。
内海「昔から2人ともしつこいのが好きだったんです。繰り返すネタが多くて。そのうちの1本」
駒場「日常会話でもよくありますよね。あれちゃうか? みたいな話。それが漫才の形として自然だった」
ミルクボーイの特徴は、ネタ作り。題材選びから時間をかけて2人で行う。改良に改良を重ねて、優勝したM-1前に今の形に定着した。
駒場「最初はオカンが言っているという設定ではなかったので、僕のキャラが定まらなかった。でもオカンを登場させることで話が伝わりやすくなったんです」
同じようでいて、常に進化を続ける彼らの漫才の面白さの秘密。
内海「この形である必要もないんですけどね。テーマは老若男女に分かりやすいものを。『小太りの角刈りが何言うとんねん!』というのも笑いにつながっていると思います」
駒場「いいネタができるまで2人でとことん考えます。舞台にかけながら平等に意見を出し合って、2人が納得のいく形に」
意外なところにも笑いにつながる要素があるようだ。
内海「以前、番組の企画でパーソナルカラーをみてもらったんですが、僕らに似合う色がスーツと同じ青と緑だと言われて。ネクタイのオレンジは緑の補色ですし。偶然選んだ衣装の色も漫才のウケに影響しているのかも。アートが僕らによってきたんですかね」
M-1後も大阪を拠点に漫才道をひた走るミルクボーイ。コロナ禍を経て気付いたことがあった。
駒場「マイク2本でアクリルパネルを隔てた漫才を経験して。相方が喋る前の息遣いを聞いて、コンマ何秒の間をはかっていたのだと気付きました。無観客配信でいつもとは違うつかみのくだりを実験したことも。お客さんがいたら絶対ウケへんような」
内海「緊急事態宣言が明けて1本のマイクに戻ったとき、漫才の歴史を見ているようで。1本のマイクを奪い合って喋るのが漫才の面白さなのかなって。改めて舞台に立てて、ありがたいと思いましたね」
原点を徹底的に深化し、進化させていく。これも一つのアートの形だ。
●ミルクボーイ
内海崇(うつみたかし)、駒場孝(こまばたかし)により2007年7月結成。2010年5月、baseメンバー入りし、低迷期を経て、2019年のM-1グランプリ10回目の挑戦で優勝。今なお大阪を拠点に精力的な活動を続けている。
Komaba: Jacket Vest, Long Coat, Big Shirt
Utsumi: Jacket Vest, Zip-up Blouson Jacket,
Highneck Rib Top, Big Shirt
(Nano Art / Instagram: nano_art_ocial)
Others: Stylist’s Own.