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今、多くの才能が、間違いなく「笑い」の周囲に集まっている。芸人は、舞台やバラエティのひな壇から飛び出し、TVのニュースショーのMCとなり、映画監督、脚本、作家、そして絵画や造形などのアート作品まで、まさに垣根を超えて、ボーダレスに活躍する範囲を拡げている。それは、SNSや動画サイトを通じて国内そして海外まで広がり、芸人サイドからだけではなく、さまざまなジャンルのアーティストたちや、公共機関さえ「笑い」というコミュニケーションに、「笑い」を生み出す才能に、何かを期待し、なんらかの関係を持とうとしている社会現象のようだ。O Plusは、今、大きな過渡期を迎えている「笑い」を、そのど真ん中から探ってみようと考えた。「笑い」最前線の現場にいる彼らや彼女たちは、今何を考えて「笑い」をつくろうとしているのか。「笑い」を生活の中に溶け込ませている世代は、これからどうその関係を育てようとしているのか。そう、今ボーダレスに拡がる「笑い」をアート目線で見ていくと、相当面白い未来が見えてくる!
Photographs: Maciej Kucia, AVGVST
Styling: Go Momose
Hair & Makeup:Toru Sakanishi
Text: Mika Nakamura
森下「『お笑いは普遍的なものじゃないといけない』という美学を持つ『笑い飯』の哲夫さんが、僕らのネタをめっちゃおもしろいと言ってくださって。このとき『原始時代の人も、未来の人も、同じように笑う』と、尊敬している人に言われたのはうれしかった。今も大切にしている言葉です」
初瀬「哲夫さんに『普遍的なものを作っていけよ』と、飲みに行くたびに言われていたので、意識するようにはなりましたね」
普遍的な笑いを求め、大切に磨き上げるななまがり。だが一方で、彼らの表現方法は挑戦的だ。2018年からは、YouTubeでの配信で、膨大な数のネタを公開している。そこには、大阪芸大出身者同士のコンビという特性もあるようだ。
初瀬「せっかくなら映像コントみたいなものをやりたいなということで始めました」
森下「CGなどを使ったりしています。映像でしか表現できないことがあるので楽しいです。おもしろいネタを作っても、舞台向きじゃないからとボツにするのが嫌だったので、いい出力先ができたなと」
初瀬「数打つのが僕らのスタイル。『やりたい』と思った時に、なんでもやるという」
今後は映像やSNSなど新しいメディアも駆使した「お笑い」の表現を加速させるのか? と問うと、それが一種の相乗効果をもたらしていると答えた。
森下「お笑いをやれるメディアを増やせた感じはありますね。でも、舞台でも尖ったことはやっています。やっぱりお客さんの反応が大事ですから」
初瀬「逆に『ここでしか観ることができないもの』を意識するようになって、ライブ自体がめっちゃ楽しくなってきています。ネットが発達した今だからこそ、そこに気づけた気がします」
5年後、2人の「お笑い」はどう変化しているのだろうか。
初瀬「僕ら、目の前のことを必死でやっているだけなんですけど、まわりから見ると時代に合っていると評価されることが多い。たぶん5年後もその時のお笑いをやれているんじゃないかと思います」
森下「僕らのスタイルとか、バカらしさという根幹は、大阪芸大にいた頃と変わらないんです。先輩のミルクボーイさんにも『変わっているところもあるけど、一緒やな』と言われて(笑)。でも、どうなっているか予想はつかないですね。だからこそ楽しみです」
「常に最先端ではいたいですね」と初瀬がポツリと言った。そのスタイルがどう進化していくのか、同時代にその変化を見届けるのが楽しみな二人だ。
●ななまがり
森下直人(もりしたなおと)、初瀬悠太(はつせゆうた)により2008年11月結成。2014年に大阪から東京へ移り、2016年にキングオブコントのファイナリストになる。2018年よりYouTubeチャンネル『ななまがりコントグラフィー』開始。