本サイトはInternet Explorerには対応しておりません。Chrome または Edge などのブラウザでご覧ください。
Topics

白浜アートプロジェクト2021 白浜アートプロジェクト2021

芸術計画学科 / イベント, プロジェクト, 産官学連携
2021/10/06

子どもたちと一緒に作るアート体験で夏の思い出を
竹のおえかきライト〜つくって あつめて 夏の冒険〜
芸術計画学科が手がけた白浜でのワークショップをレポート

夏休みならではの高揚感を1つのアート作品に

エメラルドブルーに輝く海が美しい白浜のビーチサイドに佇む南紀白浜マリオットホテルとSHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE。この二つのホテルを舞台に芸術計画学科では宿泊するファミリーを対象にワークショプを行いました。海とビーチが間近にある環境は子どもたちの気分がすごくあがるロケーションです。夏ならではのうきうきする楽しい気持ちを小さなアート作品に表現してもらおうというプロジェクトです。

白浜で体験した思い出を楽しく絵で表現
白浜で体験した思い出を楽しく絵で表現

アート体験へと誘う仕掛けはミニゲーム

ワークショップで子どもたちに作ってもらうのは、白浜での思い出を描いたり、デコレーションしていく「竹のおえかきライト」。しかし、いきなり「さぁ竹に絵を描きましょう」では学校の図画工作の時間のようです。そこで、ワークショップへの導入として、ちょっとしたミニゲームを企画しました。それが立体竹わなげとスーパーボールすくい。立体竹わなげは年齢に応じて標的までの距離を変え、獲得した得点に応じてお菓子をプレゼント。スーパーボールすくいではサブテーマの「浦島太郎」にあわせてカメやタコ、お魚と海の生き物のかたちをしたおもちゃをすくってもらいます。ゲームをするうちに子どもたちとコミュニケーションが自然ととれるようになり、そのままスムーズにアート体験へ誘おうという狙いです。

ミニゲームで海の生き物をかたどったおもちゃをゲット
ミニゲームで海の生き物をかたどったおもちゃをゲット
ガイドラインにそって楽しくお絵かき
ガイドラインにそって楽しくお絵かき

細部まで考え抜かれた新型コロナ感染対策

ワークショップが開催されたのは2021年8月。和歌山と県境を接する大阪は緊急事態宣言下にありました。子どもたちや保護者の方々とコミュニケーションをとりつつも感染症対策のための距離はしっかり保たなくてはならない深刻な状況です。スタッフは消毒や検温を義務付け、マスクの上からフェイスシールドを着用。ワークショップの1週間前から健康チェック表で健康管理を行ってきました。もちろん、ワークショップに参加する子どもたちや保護者の方々にもマスク着用をお願いして消毒や検温を実施しました。すでに皆さんコロナ禍で1年半もの期間を過ごしてきたこともあって、感染対策にはこころよく協力していただけました。

近くで接していても直接触らないように細心の注意を
近くで接していても直接触らないように細心の注意を
マスクとフェイスシールドで感染対策を徹底
マスクとフェイスシールドで感染対策を徹底

ライブペインティングを同時開催

アートに親しんでもらうコンセプトに沿ってSHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMOREでは大阪芸術大学出身のクリエイターチーム「透明回線」によるライブペイントとプロジェクションマッピングを組み合わせたライブパフォーマンスも行われました。最近では、MVなどの映像作品や、企業へのグラフィック、イラストの提供などライブパフォーマンスの枠を超え精力的に制作活動を行っています。そんな彼らも毎年のように白浜でのアートイベントに参加してくれています。子どもたちに「夏の思い出に残るアート体験をしてもらう」というコンセプトに沿ったロケーションです。

大きなキャンバスにダイナミックにライブペイントしていく
大きなキャンバスにダイナミックにライブペイントしていく

産学連携のプロジェクトが白浜で花開く

 SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMOREを運営する株式会社白浜館の代表取締役社長中田力文氏に今回のワークショップを終えてお話を聞きました。「白浜では数年前から産学連携プロジェクトの一環としてコンサートやアートイベント、ワークショップなどを実施してきました。地域振興のためには観光で当地を訪れるお客様はもちろん、地元の方々にも芸術に触れ合っていただく機会が大切です。スタッフとして携わった学生の皆さんも積極的で、揃いのアロハシャツを着てフライヤーを手に宿泊客の皆さんにアプローチしていた姿が印象的でした。私たちはもっと大阪芸術大学様と連携したプロジェクトを進めたいと考えています。今温めているラフなアイデア段階の企画を大学の皆さんとブラッシュアップしていきたいですね」と今後の展開に期待できるお話をいただきました。

ワークショップには48人の子どもたちの参加がありました
ワークショップには48人の子どもたちの参加がありました

ワークショップ「竹のおえかきライト」を終えて

参加していただいたご家族には、ウェブ上に後でゆっくりと答えて頂けるアンケートフォームを用意しました。紙でアンケートをやり取りしなかったのは接触時間を可能な限り減らすという感染対策のため。回答があったのは21件で、兄弟や姉妹での参加が多かったことを考えると参加したほとんどのご家族から回答を頂けました。「何をきっかけにワークショップを知ったのか」という質問では、38%がホテルのホームページ、28%がポスター、14%がフライヤーを見て、という回答。集客には事前告知が必須だということが浮き彫りになりました。大学のホームページを見て、という回答を加えると半数近くがウェブサイトが情報源になります。自由記入欄には、「楽しい体験ができました。子供たちは大喜びで、部屋に帰ってからも、嬉しそうでした」や「クラフトを楽しみつつ、夏の思い出になりました」という肯定的な意見が綴られていました。全体の満足度から見てもワークショップは成功したと言えるでしょう。

村上 敬造学科長
芸術計画学科長
村上 敬造

開催日には早朝から会場設営作業スタート。当初の予定通り設営してみるとつまらない、もっといい会場レイアウトがあるはずだと、そこでも試行錯誤を繰り返しました。時間的な制限があるなかで、よりベターな選択肢を模索しながらお客様を迎え入れる準備を進めていきました。やっぱり現場に来て初めてわかることってありますね。その気づきをいかに現実に反映していくかが大切です。もちろん時間をカウントしつつね(笑)。

昨年はコロナ禍にあっての最初の夏、感染対策に対する知見が充分に積み上がっていなくて残念ながら中止ということになってしまいました。今年はコロナ禍のなか芸術計画学科が企画運営してきた卒業制作展などで培ったノウハウを活用して万全の体制で臨みました。本来はこの白浜でのアートプロジェクトは企画段階では本記事で紹介しているワークショップ「竹のおえかきライト〜つくって あつめて 夏の冒険〜」ともう1つのイベントとあわせて2つで「Summer Memories in 白浜」でした。

もう1つのイベントはビーチでバルーンイルミネーションを行う「月夜のくじら」。ただ開催時は前述のように感染者が急激に増えている状況。ワークショップは申し込み予約というステップがあって参加者のトレーサビリティがありますが、イルミネーションイベントは不特定多数が観覧に訪れることが予測されます。なおかつイルミネーションのセッティングは感染予防のためマスクを着用して酷暑の日中に設営作業をしなければなりません。クラスター発生や熱中症のリスクを考えあわせ、ぎりぎりの段階でイルミネーション「月夜のくじら」を中止するという苦渋の決断をしなければなりませんでした。しかし、そういった開催可否の見切りも重要な学び。今後、イベントやワークショップを運営していくうえで学生たちには貴重な経験になったと思います。

芳村望さん
芸術計画学科3年
芳村 望さん

1年生のときに白浜プロジェクトに参加して、子どもたちや親御さんたちが家族で楽しんでいる姿を見て、自分でもこんなワークショップを作ってみたいな、と思いました。そこで昨年も引き続きディレクターとして参加したいと思っていたのですが残念ながら中止。今年やっとプロデューサーとしてプロジェクトに参加することができました。今回のコンセプトはコロナ禍でも家族と一緒に「夏の思い出に残るアート体験をしてもらう」ことです。竹のおえかきライトは、家に帰ってからも白浜での夏の思い出がよみがえるきっかけに。部屋を暗くしてスマートフォンのライトをなかに入れて照らせば、子どもたちが描いた絵が壁面や天井に映し出されるようになっています。会場でもそんな光景をシミュレーションできるように試写ボックスを用意しました。

開催の約1ヶ月ほど前に開催場所を提供してくださる2つのホテルに企画内容の説明にお伺いした際はゲスト目線での導線の確保や搬入や搬出について、具体的なアドバイスを頂いてすごく勉強になりました。本番ではスタッフやディレクターなどそれぞれが連携して動くことがワークショップ成功の鍵です。だから全体の動きを各スタッフが把握していることや報連相は必要不可欠。特に今回はディレクターを務める2年生の人員が少なかったので、オーバーフローしそうだったら早めに報告をあげるよう指示しました。3年生が早めにフォローに入ることでトラブルを回避することができました。

陸田珠希さん
芸術計画学科2年
陸田 珠希さん

私は大阪出身ですが、生まれは和歌山なんです。なので、和歌山で開かれるこのアートプロジェクトには参加しようと決めていました。ワークショップとイルミネーションでは、もともと子どもたちと触れ合うのが好きだったので迷うこと無くワークショップをチョイス。ワークショップの現場には2年生が6名。そのなかで真っ先に手をあげてリーダーに選ばれました。今回はコロナ禍が収束していなかったこともあって、ミーティングはzoomで、共有しなければならない情報や連絡事項はメッセージアプリを活用して行いました。だからリーダーといってもみんなをぐいぐい引っ張っていくというよりも調整役に徹していた感じです。

このワークショップの参加者枠は2日間で80名。参加してくれたのはすべてで48人の子どもたちでした。もっと参加してくれたらよりうれしかったと思いますが、コロナ禍のなかでは充分に成功だったと思います。子どもたちが作った竹のライトを見つめながら、親子で笑顔になる瞬間がたくさん見られました。ソーシャルディスタンスという制約を守りながら、いかに子どもたちと仲良くなるかが私たちの課題でした。ほどよい距離感を掴むまで、スタッフみんなが緊張した面持ちで参加者の皆さんに接していたのが印象に残っています。