「イタリアでは、愛情を込めて『ダ・ヴィンチ』ではなく『レオナルド』と呼びます」と笑顔で話されるのは、レオナルド・ダ・ヴィンチ国立科学技術博物館館長のフィオレンツォ・ガッリ氏。芸術情報センターAVホールで特別講演会「レオナルド・ダ・ヴィンチ クリエイティブの力」が開かれ、会場には、たくさんの聴講者が集まりました。フィオレンツォ・ガッリ氏が、スライドに映し出される作品の数々に触れながら、その時代背景やエピソードを展開。当時の高名な哲学者たちにも愛された、レオナルドの素顔や、クリエイティブ力について語ってくださいました。
フィオレンツォ・ガッリ氏/大阪の姉妹都市、ミラノ出身。2001年、レオナルド・ダ・ヴィンチ国立科学技術博物館館長に就任。ミラノ大学でのコンテンポラリー博物館学の他、多くの大学で様々な学士や修士コースをご教授されています。
ミュンヘンのドイツ博物館クマトリアムのメンバー、イタリア文部省の科学文化普及委員会の運営委員など、様々な科学委員会に所属。EFE(教育のためのヨーロッパ財団)の共同創設者及びメンバーでもあり、文化寄与において数多くの賞や勲章を授賞されています。
芸術家としても、エンジニアとしても、さまざまな功績を残したレオナルド。その大きな特長は、あふれんばかりの好奇心と、もの事を様々な側面から観察し、読み解く力だったと、フィオレンツォ・ガッリ氏は話されます。1400年代後半、絵画では人物と背景の境目を作らない「ぼかしテクニック」を生み出した一方、当時すでに空飛ぶ船や宇宙船についての研究にも没頭していたという、驚くべき話も飛び出しました。豊富な好奇心で、芸術から科学まで、幅広いものや事象を観察し、未来への考察へとつなげていったレオナルド。「クリエイティブに欠かせないのは、なによりも好奇心です。これからの若い人たちには、芸術だけでなく科学に触れるチャンスもつかんでほしい」と締めくくられました。また、後半に行われたトークセッションでは、大阪芸術大学藝術研究所所長で、デザイン学科教授の喜多俊之先生を交え、アートとサイエンスの融合が欠かせない、クリエイティブの未来について、議論を繰り広げました。