年間を通じて様々な発表の場を設けている演奏学科。中でもクラシック音楽の学びの集大成となる「特別演奏会」が、2023年12月7日、大阪・中之島のフェスティバルホールで開催されました。今回はベートーヴェン作曲の交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」、そしてヘンデル作曲のオラトリオ「メサイア」と、世界中で愛され続ける2曲の名曲を演奏し、聴衆を感動で包みました。
演奏学科では、プロと同じ環境で日頃の研鑽の成果を発表する機会を数多く設け、演奏家としての経験と実力を高めています。とりわけ毎年12月に開催される「特別演奏会」は、クラシック音楽の発表の場として1年を締めくくる、まさに特別な演奏会。日本屈指の音楽の殿堂であるフェスティバルホールにて、大阪芸術大学管弦楽団と同混声合唱団が、クラシック愛好家ならずとも誰もが耳にしたことのある有名な楽曲を演奏しました。
開演後、まず大阪芸術大学管弦楽団がステージに上がり、世界的に活躍するマエストロで演奏学科教授の大友直人先生が登場しました。1曲目はベートーヴェンの代表作とも言える交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」。大友先生がオーケストラのメンバーを見渡し、両手を振り下ろすと同時に、あの有名な冒頭のフレーズが会場に鳴り響き、一瞬にして観客の心をつかみました。
苦悩や深刻さが伝わる第1楽章、穏やかで心が安らぐ第2楽章、リズミカルなスケルツォが用いられた第3楽章、そして明るく力強い第4楽章。苦難から歓喜への物語を表現するかのような華やかなフィナーレに、大きな拍手とブラボーの声があがりました。
休憩を挟んで2曲目は、ヘンデルのオラトリオ「メサイア」。聖書をもとにキリストの生涯を劇音楽として描いた全53曲から22曲を選りすぐり、大阪芸術大学ならではのスペシャルバージョンで演奏されました。
総勢140名の大阪芸術大学混声合唱団とともにソリストが登場。ソプラノは大阪芸術大学大学院に在学中の上野舞さん、テノールは演奏学科で教鞭を執り今回の合唱の指導にもあたった秋本靖仁先生、バリトンは演奏学科長の三原剛先生が務めました。
オーケストラと合唱団、独唱によって織りなされる壮大なハーモニーが会場を魅了。耳馴染みのある「ハレルヤ」のコーラスが高らかに歌い上げられ、クリスマス気分が一気に盛り上がります。クライマックスの「アーメン」のコーラスで演奏が締めくくられると、万雷の拍手が沸き起こりました。演奏者を称える拍手はいつまでも鳴りやまず、客席と舞台があたたかな一体感に包まれながら終演。学生たちは、長い時間をかけて大作に取り組んできただけに、本番で練習の成果をしっかりと発揮できた喜びと達成感に浸っていました。
特別演奏会では、半年以上をかけて大曲の合唱に取り組みます。発声やリズムなどの技術ももちろん必要ですが、合唱で最も大切なのは、あらゆる感覚を研ぎ澄ませて互いの気配を感じ合うこと。他の人の声や他のパートとの調和を図り、全員のエネルギーが一つになることで、豊かなハーモニーが生まれます。地道な練習を通じてそれを少しずつ実感し、さらにオーケストラの音色とあわさって、この大きな舞台での本番だからこそ体験できる学びや感動を得ることができるのです。 声楽コースだけでなく演奏学科(クラシックやポピュラー)、音楽学科の全コースからの履修者によるこの授業、初めて合唱に挑戦する人もおり、練習中にはつまずいたり悩んだりすることもあったと思いますが、学生たちはこつこつとプロセスを積んで成長し、当日は素晴らしい歌声を披露してくれました。一人ひとりが「自分たちがつくりあげるんだ」という強い思いで自発的・能動的に取り組み、自らの中からパワーが自然と湧きだしてくるようなこの経験は、今後の大きな糧になるはずです。歌うことは呼吸であり、まさに生きることそのもの。嬉しいとか悲しいといった、日常の中でさまざまな感情を覚える心さえも楽器になるということを、授業の中でも伝えていけたらと考えています。 大阪芸大には15学科あり、演奏学科だけでも幅広いジャンルがあります。音楽にふれる時期やきっかけも人それぞれ。まずは飛び込んでから理論的なことや専門スキルを学んでいくことも可能です。キャンパスは自由なエネルギーに満ち、自分の力を十分に発揮したり周囲から力や刺激を受け取ったりし合うのにも最適な場所。はつらつとした元気にあふれるこの大学で、好きなこと、興味あることに打ち込む喜びを感じてほしいと思います。
私たちの学年は、コロナ禍で1年次の特別演奏会は中止され、2・3年次はマスクを付けての合唱だったため、今回初めてマスクなしで思う存分歌うことができました。これほど大人数で、こんなに大きな舞台に立って歌う経験は、後にも先にもきっとないと思います。4年生の私にとってフェスティバルホールに立つのも最後とあって、とても感慨深い演奏会になりました。 「ハレルヤ」のコーラスで有名な「メサイア」は、声楽を学ぶ人なら一度は歌いたい憧れの曲です。初めて楽譜を見た時には、あまりの難しさに驚いて少し不安にもなりましたが、先生方のご指導と直前の追い込み練習のおかげで、自信をもって当日を迎えられました。時期的にもクリスマスが近いので祝祭らしい気分が高まり、思いを込めて歌うことができて嬉しかったです。 高校時代から音楽の先生が目標でしたが、音楽教育よりも声楽を学びたかったこともあり、教育大学ではなく大阪芸大演奏学科の声楽コースを選びました。特に三原剛先生の授業は、のびのびと歌いやすい雰囲気で、一人ひとりの良さを最大限に引き出してくださり、週に1回のレッスンは宝物のような時間でした。教職課程の先生方にも親身にサポートしていただいて、大阪市の教員採用試験に合格。春からは中学校の音楽教諭として、芸大での学びや経験をもとに、音楽の楽しさを伝えていきます。「楽しかったな」「そういえばこんな音楽を習ったな」と後から少しでも思い返してもらい、これから生徒たちが生きていく上で何かの力になれるような授業をしていきたいと思っています。
私は別の大学から大阪芸術大学演奏学科に3年次編入しました。他大学でマーチングバンドの部活動に取り組む中で、もっと真剣にトランペットを学びたくなり、大阪芸大のパワフルで魅力的な演奏と、演奏学科教授の橋爪伴之先生が奏でるトランペットの音色や音楽性に惹かれて、「この大学でこの先生に教わりたい!」と編入を決めたのです。 編入から2年間で色々な舞台を経験してきましたが、とりわけ特別演奏会は、参加メンバー全員とても気合が入る演奏会です。自分たちの理想の演奏をとことん追求するために、個人練習やパート練習にも力を入れ、本番の日も互いに自主練習して気持ちを高めてきました。私は1曲目の「運命」でロータリートランペットを担当。「運命」は特によく知られる超有名曲だけに、プレッシャーもかなり大きく、これまで積んできた練習や音楽に賭ける色々な思いが浮かんできて、演奏しながら胸が熱くなりました。 一流の音楽家である先生方と一緒に、学生ではなかなか立つことのできない有名ホールで演奏できるのは、大阪芸大だからこその魅力。編入して本当に良かったと思います。素晴らしい先生方のあたたかいご指導で、一回りも二回りも成長することができました。卒業後はできれば大学院に進み、引き続き橋爪先生のもとで学びたいと考えています。技術を磨くだけでなく、今まで以上にもっともっとトランペットを好きになり、自信を持って演奏できるプロ奏者をめざしたいです。