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子どもたちと一緒にトンネルアートで街づくり 子どもたちと一緒にトンネルアートで街づくり

初等芸術教育学科 / 産官学連携
2024/08/26

初等芸術教育学科では、地域と連携して子どもたちの未来を育むアートプロジェクトに多数取り組んでいます。1~4年生の有志の学生たちが、2023~2024年にかけて大阪府和泉市で開催された2年越しのトンネルアート・プロジェクトに参加。地元の中学生や小学生たちと一緒にトンネルをカラフルな壁画で彩りました。

子どもたちとともにアートの力を体感しながら地域に貢献するイベントは、教育者や保育者をめざす学生たちにとって大きな学びになりました。

2024年秋には総仕上げと完成お披露目のイベントが行われる予定です。

トンネルをペイントして明るく楽しいアート空間に

和泉市・南池田中学校区地域教育協議会の主催により、同市内の「かぐらざき公園遊歩道トンネル」で実施された今回のプロジェクト。落書きによって景観が損なわれていたトンネルに壁画を描き、明るく通行しやすい雰囲気に生まれ変わらせようという取り組みです。

2023年の秋から活動がスタートし、まず和泉市立南池田中学校美術部の生徒たちが「100本の虹をかけよう」をテーマにして原画を作成。12月に壁画制作が行われ、初等芸術教育学科の学生たちが、PTAや地域の方々とともに中学生のペイント作業をサポートしました。

2024年1月には、全長約30mのうち約3分の1が完成。お披露目を兼ねて、地元の小学生たちが仕上げのスタンプを押し、カラフルで楽しいトンネルアートが出来上がりました。

中学生たちと力を合わせて和気あいあいの共同制作

半年を経た2024年6月、残りの3分の2区間の壁画制作に取り組みました。4日程に分けて作業を進め、初日は壁面の清掃と下地塗りを実施。2日目は、白いキャンバスとなった壁面に下描きし、3・4日目に本塗りを行いました。

初等芸術教育学科の佐藤有紀准教授の指導のもと、学生たちは子どもたちの塗りたい色にあわせて塗料を調合するなどして、作業がスムーズに運ぶようサポート。また自分たちもペイントを行い、子どもたちと一緒に自ら刷毛や絵筆を動かして、下描きの絵に彩色していきました。

現代アートの作家でもある佐藤有紀准教授が塗料の調色や塗り方などをアドバイス

ペイントしながらコミュニケーションも自然と深まり、中学生・大学生の境目なく一緒に力をあわせて和気あいあいと作業を進行。ツナギやシャツにペイントし合ったり、暑さ対策で配られた冷却シートに落書きし合ったりと、楽しく盛り上がりながら制作を進めます。

お互いの作業着にペイントしてさらにテンションアップ
冷却シートにメッセージを書き合ってエールの交換も

作業中、PTAの方々が差し入れを持って見学に来てくださったり、通りがかった地元の方々から「上手やね」「楽しみにしてるよ」「がんばって」などと声がかかったりして、大きな励みに。またプロジェクトを主催する教育協議会の方々が、現場に常駐して、スムーズな制作を支えてくださっていました。

PTAや近隣の皆さんがあたたかく見守りながら応援
初等芸術教育学科の車谷哲明学科長(左)や教育協議会の担当者も激励

南池田中学校美術部顧問の田村浩子先生は、「芸大生のお兄さん、お姉さんと一緒に制作し、優しく接してもらったりほめてもらったりして、子どもたちはとても楽しかったようです。実は私自身も大阪芸大出身なのですが、今回参加してくれた学生の皆さんはとても親しみやすく、社会性やコミュニケーション力の高さに驚きました。中学生にも学生の皆さんにも、双方にとって良い経験になったのではないでしょうか」とコメント。

中学生からも「初めて壁画を描いて楽しかった」「自分たちの街の誇りになってうれしい」「みんなで協力して描いて達成感があった」「教えてくれた大学生に感謝したい」などの感想が寄せられました。

南池田中学校美術部顧問の田村浩子先生は大阪芸大デザイン学科の卒業生

すべての壁面を塗り上げ、ついにトンネルアート全体が完成!たくさんの虹がかかり、楽しさいっぱいのアートが施されて、ワクワクする空間に仕上がりました。2024年秋には、総仕上げとお披露目のイベントが予定されています。

初等芸術教育学科 准教授
佐藤 有紀 先生

和泉市との連携で、地域のアートイベントに学生が参加し、子どもたちとふれあう学びの機会が実現しました。大きな空間での絵づくりは、将来保育や教育の現場に出た時にも役立つ経験です。こうした場ではアートの中身ももちろん重要ですが、それ以上に大切なのが、子どもたちがのびのびと楽しく制作できるようサポートすること。今回、学生たちが自ら積極的に動いて子どもたちを支える姿を見られて、うれしかったですね。また、現場で地域の方々の協力や応援を実感できたという意味でも、有意義な体験になったと思います。

みんなで行う共同制作では、「こうあるべき」の押しつけになってしまう恐れもあります。でも今回は、南池田中学校の田村先生のご指導で、子どもたちが主体的かつ自由に描きたい絵を描ける環境ができていました。自分の世界に入り込んで描きたい子もいれば、細かく補助する方がいい場合もあって、それぞれに適したアプローチが必要です。一人ひとりの表現を尊重し、それを引き出す環境を作るにはどうすればいいか、学生たちも目の当たりにできたのではないでしょうか。

初等芸術教育学科には、学内外で子どもたちとともに学び合う場が数多くあります。私自身も認定こども園で子どもたちに新しい経験を提供する「芸術士」を務め、その活動に学生に参加してもらったりもしています。今回のプロジェクトも含め、そうした生きた学びをできるだけ色々な形で体験してほしい。アートの力を教育現場にいかせる人は、これからますます必要になってきます。また、保育や教育というクリエイティブな仕事に携わりながら作家活動を続ける生き方もできます。自分が好きなことを子どもたちと一緒に追求していくのも楽しいですよ。

初等芸術教育学科 4年生
岡島 裕子 さん

昨年からこのプロジェクトに参加しています。中学生と接する中で心がけたのは、相手の緊張をほぐすこと。学校の話を聞くなど気さくに話しかけ、楽しい雰囲気づくりを大事にしました。小学生がスタンプを押す時には、「ここに押してみようか」「こうしたらおもしろくなるかな?」と率先してやってみせ、初めての体験にとまどう子どもたちに楽しんでもらえるよう工夫。6月の作業では、主に塗料の調合など裏方を担当し、子どもたちと接するのはなるべく後輩メンバーにまかせて、みんなに色々なことを経験してもらえるように後押ししました。
プロジェクトを通じて一番印象に残ったのは、完成した時の子どもたちの笑顔です。ずっと地元に残るアートを自分たちの手でつくったことは、子どもたちにとって良い思い出になったと思いますし、それに携わることができてうれしかったです。
初等芸術教育学科で、芸術や表現する楽しさが子どもの成長にどれだけ大切かを学び、アットホームな環境で人と関わり合う中で、自分自身も成長できました。卒業後は幼稚園教諭になり、「芸大出身の先生」だからこそできる活動に取り組んでいきたいです。

初等芸術教育学科 2年生
内田 紬 さん

昨年の活動の様子を先輩から聞き、ふだんあまり接点のない中学生と関わってみたいと思ったのが参加のきっかけ。現場では積極的に声をかけ、「教えてあげる、サポートしてあげる」というより一緒に楽しもうという感覚で取り組みました。壁にテープで下描きの目安となる線を引く時、サイズの調整に苦労していたら、中学生たちは大まかに線を引いて、うまく作業を進めていたんです。「そんな発想もあるんだ!」と逆にこちらが学ばされたり、刺激を受けたりもしましたね。
トンネルに絵を描くというのは、普通ではなかなかできない体験です。壁一面が真っ白いキャンバスになって、そこに一から絵を描き、色が加わって、アートになっていく。離れて見ると大画面ならではの迫力がすごかったです。大人数での共同制作はとても楽しく、子どもたちと一緒に地域の活性化につながる制作ができて、とてもやりがいがありました。
もともと絵が好きで、美術系高校出身の私は、小学校の先生に憧れて、芸術系も教育系も学べるこの学科を選びました。社会経験もしたいので企業への就職も考えていますが、どんな形にしても子どもと関わりながら芸術の楽しさを伝えられる仕事に就きたいと思っています。

初等芸術教育学科 1年生
神原 歩佳 さん

自分が住む和泉市にこんなプロジェクトがあることを知って興味を持ち、少しでも貢献できればいいなと考えて参加しました。中学生たちは、リアルな風景やユニークなキャラクターなどいろいろなモチーフを描いていたのですが、美術部員だけあって、とても上手で個性豊か。実は絵を描くのは苦手な私も、中学生と友達同士のように自然体でコミュニケーションを取りながら、新鮮な気持ちで制作に取り組むことができました。
塗料を混ぜてイメージ通りの色を出すのが難しかったり、壁に塗料が垂れてしまったりと大変な面もあったのですが、それも含めて、とても楽しかったです。完成した時には、うれしさと同時に、これでプロジェクトが終わるのはもったいないと感じました。壁だけでなく天井も塗ったり、他のトンネルでもアートを描いたり、もっと活動を広げていけたらいいですね。
私は、保育士・幼稚園教諭・小学校教諭のトリプル資格取得を目標に入学しました。ここでは色々な芸術活動にふれることができ、直接子どもと接するボランティア活動の場も多いので、在学中にたくさん経験を積み、子どもたちを楽しませられる先生をめざしたいです。