上映後は、大森一樹学科長の司会進行のもと、小森氏と安藤氏によるトークショーが行われました。小森氏は学生時代、当時の学科長・中島貞夫監督の指導を受け、ひたすらに作品づくりに励んでいたといいます。ある日、「いい女の定義とは?」をテーマに決めてドキュメンタリーを撮るにあたり、行き詰まっていると、中島監督から「歴史書を読め」との言葉が。すぐさま深夜バスで東京にある国立国会図書館まで出向いたものの、その量は膨大。監督に電話で「これを全部読んでいたら学生生活どころか一生かかりますよ!」と嘆いたところ、「お前のいまの状態がそういうことだ」と諭されました。哲学的なテーマを前にして悶々と頭で考えていても何も進まないと気づかされた小森氏はその後、湯河原の芸者を訪ねるなど、とにかくいろんな女性の話を聴いて回りました。「いちいち説明してもらえる指導方法ではなかったですが、それが良かったんだと思います」と小森氏。そんな経験談を例に、「頭で考えるよりまずは足!」「動いたら何かに出合う」「脚で書くから脚本だ」「分かった気になるのと、分かるのは違う」といった制作における自らの流儀を学生たちに語りました。
また、「100万人が観る映画とは?」という話題で盛り上がり、制作費や興行収入といったお金の話から、商品としての映画に必要なもの、テレビとの差別化を図るための映画ならではの演出、映画のラストを原作とは違うストーリーにした裏話、映画監督を夢見た学生時代から現在のキャリアに至った小森氏の心中に至るまで、赤裸々なトークが披露されました。とくに学生が興味を示していたのは、良いプロデューサーや脚本家について言及した「原作者が通った道を通ってくれる人」という小森氏の発言です。小森氏が原作執筆時に取材した内容を、映画化にあたってスタッフたちが改めて取材したことから、「新たに調べられたネタも入っていて驚きました! そういうスタッフと出会えたら幸せですね」と小森氏。第一線で活躍する大先輩の言葉や姿勢に、学生たちは多くの刺激を得ることとなりました。