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第15回高円宮殿下記念根付コンペティション 第15回高円宮殿下記念根付コンペティション

工芸学科
2024/04/11

大阪芸術大学グループ(大阪芸術大学、大阪芸術大学短期大学部、大阪芸術大学附属大阪美術専門学校)の在学生を対象に、2009年より毎年開催している「高円宮殿下記念根付コンペティション」。第15回となる2023年度は、178名の学生から198点の応募があり、17名の入賞者が選ばれました。

これを記念する展覧会を2023年12月5日から21日まで、大阪芸術大学スカイキャンパスにて開催。オープニングセレモニーとして、高円宮妃久子殿下のご臨席を仰ぎ、表彰式と内覧会が執り行われました。

掌におさまる美術品「根付」。若い感性と新鮮な発想で挑戦。

高円宮妃久子殿下は、高円宮憲仁親王殿下とともに世界有数の根付コレクターとして知られ、現代根付作家の育成にも力を注いでおられます。本学では客員教授としてご講義を賜っており、芸術を学ぶ学生たちに根付を通して日本文化の奥深さをご教示いただいております。

根付とは印籠や煙草入れなどを帯に提げて携帯する際に使われる江戸時代の装身具で、現代では美術品として海外からも高く評価されています。その日本独自の極小工芸に、今回も学生たちが創意工夫を凝らして挑みました。

178名の学生たちが応募した198点の作品は、10月18日に、高円宮妃久子殿下と根付作家の和地一風氏、塚本邦彦学長をはじめ本学教員が厳正な審査を行い、17名の入賞者が決定しました。

表彰式では高円宮妃久子妃殿下から、次世代の根付作品へ期待のお言葉が。

あべのハルカス24階の大阪芸術大学スカイキャンパスにおいて、12月5日から21日まで記念展を開催。すべての応募作品とともに高円宮家からお借りした貴重な根付約130点と、高円宮妃久子殿下が撮影された「旅する根付」の写真パネル約20点が展示されました。

初日の12月5日には、高円宮妃久子殿下ご臨席のもとで表彰式が執り行われ、高円宮賞を受賞した大阪芸術大学附属大阪美術専門学校 コミック・アート学科 フィギュアコース 2年の梶野一郎さんをはじめ、入賞者に表彰状や記念品が贈られました。

表彰式にあたって高円宮妃久子殿下より「根付は帯に固定するという役割を果たせば、素材や作風、技法に制限はなく自由な発想で創作することができます。応募してくださった学生さんたちは根付の歴史を学びつつ、真摯な気持ちで根付と向き合って、さまざまな創意工夫で今までに見たことがないようなデザインを毎回生み出しています。良い作品を作ろうと努力する姿勢に根付愛好家として感謝しています」とのお言葉をいただき、改めて関係者一同「高円宮殿下記念根付コンペティション」の意義を心に刻みました。

内覧会では高円宮妃久子殿下が入賞者の作品を前にして、一人ひとりとお話され、作品の感想やアドバイス、励ましのお言葉をかけてくださいました。前回を上回る出品数で、表現や技法も多種多彩で趣向に富んでおり、見応えのある記念展となりました。

高円宮家の貴重な根付コレクションを拝見する場面では、妃殿下が一点一点解説してくださり、学生たちも手に取ってその精緻な造形を実感することができました。質問にもていねいに答えてくださり、学生にとって一流の作品に触れるこの上ないすばらしい機会となりました。この体験は今後の創作活動の大きな糧になることでしょう。

高円宮賞

高円宮賞

大阪芸術大学附属大阪美術専門学校 コミック・アート学科 フィギュアコース 2年
梶野一郎さん

今回はからくり根付に挑戦しようと早くから決めていました。からくり根付の存在を知ったのは、高円宮妃久子殿下の根付のご講義を拝聴した時です。「動く」というところにとても魅力を感じ、いろいろと構想を練っていました。

小さくて手で握ることもある根付のデザインは、丸みのある自然のモチーフにしよう。自然物で動くというとやっぱり花びらだろう。蓮の花ならきれいかもしれない。蓮といえばカエルかな・・・というふうにアイデアが連想ゲームのように湧いてきて、「蓮にカエル(ハウスに帰る)」が誕生しました。

制作過程で一番悩んだのは色塗りです。グリーン、白、ピンクへ、蓮の透明感を出すのが難しく、細い線で描くのは困難を極めました。ところが妃殿下にご講評をいただいた時に「色塗りの表現がきれいですね」とお褒めの言葉をいただき、頑張って良かったと感激もひとしおでした。からくり根付をはじめ、花びらの水滴など細部の表現にも興味を示されて、私の制作意図もよく理解しておられました。学生に対しても真剣に対峙してくださり、的確であたたかなアドバイスをくださるご様子に感銘を受けました。

根付は高い芸術性を持つ美術品であり、私自身の創作の高みに位置付けられるものです。

新年度から大阪芸術大学キャラクター造形学科の3 年生に編入することになり、「第16 回高円宮殿下記念根付コンペティション」にも参加しようと今から夢を膨らませています。

学長賞

学長賞

大阪芸術大学 工芸学科3年
薬師寺千誉さん

ガラス工芸による根付は珍しく、未知のジャンルだからこそ挑戦したいと思いました。人の手に触れることを念頭に置き、破損しにくい形状や角の処理など、安全性と耐久性にはかなり配慮して制作しました。同じ形の集合体が好きで、受賞作も架空の結晶をイメージしたものです。制作途中で折れてしまって作り直すなど、完成まで苦労したこともありました。

高円宮妃久子殿下には「不思議な作品」と評され、「根付では今まで見かけない形ですね」とおっしゃって、ガラス制作の技術的なことをいろいろとお訊ねになりました。そのすべてが根付に造詣の深い妃殿下ならではのご質問で、一点一点丁寧に審査してくださっていることを改めて感じました。大変ありがたく、うれしさでいっぱいです。

「ガラスで根付を作ってみたい」という一心で応募したので、まさか賞をいただくとは思いもよりませんでした。日本の伝統的な根付と、西洋から渡来したガラス。根付にチャレンジしたことで、和と洋の融合という新たな課題に取り組むことができました。受賞を大きな励みとして、最終学年の卒業制作にも自信を持って向き合いたいと思います。