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【著者】
久米雅雄(大阪芸術大学 通信教育部 客員教授)
【出版】
兵庫県書作家協会
【定価】
非売品(全国公的機関及び会員2000名に頒布)
【発行日】
2022年8月
【内容】兵庫県書作家協会(事務局:神戸市)は、戦後の混迷期に日本の書文化の燈火を絶やさないようにと、当時、兵庫の書壇を代表された先生方の結束により立ち上げられた書作家の団体である。漢字・かな・篆刻・前衛の4分野からなり、数々の日本芸術院賞受賞者、兵庫県文化賞受賞者、日展審査員、日展特選受賞者など、多数の卓越した人材を輩出した、一県の書道団体としては他県に類を見ない2000名を越える会員を有する日本屈指の書道団体である。
2022年4月29日(金)〔昭和の日〕の午後13時から、この兵庫県書作家協会の主催で、ANAクラウンプラザホテル神戸において、通常総会のあと研究会が開催された。「国宝金印『漢委奴国王の読み方と発見の謎』というテーマで約1時間半の講演を依頼されたが、研究会で「篆刻」もしくは「印学」が扱われたのは初めての試みと聞く。本書はその際の講演録であり、『会報』第71号に収録されている。
内容的には全体で74コマの画像を用いながら、国宝金印の研究史、学生時代にいだいた通説への疑問、1983年における「金印奴国説への反論」(金印・委奴=伊都国説の展開)の発表と世間の反応、立論構造の解説(漢語方言論・印文構造・北九州弥生四王墓の分布・「魏志倭人伝」の伊都国観と奴国観・真贋鑑定の方法・志賀島発見の謎など)について論じている。
自著としては、すでに博士学位論文である『日本印章史の研究』(雄山閣2004)や『はんこ』(法政大学出版局2016)や『両宋金石学序説』(西泠印社2021)などがあるが、本講演録の中では今まで扱われなかった、お世話になった先生方や中国やアメリカでの国際学会のことなどにもふれている。
人生の基礎の造形は若い時に始めねばならない。特に学生時代に学徳ともに優れた教師に出会えれば幸福である。生涯を通じて自由に学べるのは学生時代しかない。この時期に基礎である骨格をつくり、あとは生涯かけて造形にすすむのである。前途の祝福をお祈りしています。