大阪芸術大学グループの在学生を対象に毎年開催している「高円宮殿下記念 根付コンペティション」。第14回となる2022年度は130名から141作品の応募があり、17名の入賞者が選ばれました。
これを記念する展覧会を、大阪芸術大学スカイキャンパスにて開催。オープニングセレモニーとして、高円宮妃久子殿下のご臨席を仰ぎ、表彰式と内覧会が執り行われました。
江戸時代に実用的な装身具として広く愛用された「根付」。現代では芸術的価値の高い美術品としても評価され、海外の美術館でも多数展示されています。
大阪芸術大学客員教授の高円宮妃久子殿下は、高円宮憲仁親王殿下とともに世界有数の根付コレクターとして知られ、現代根付作家の育成にも尽力されています。多忙なご公務の中、学生たちに向けたご講義でも、根付を通した日本文化の継承についてお話いただいています。
大阪芸術大学グループでは、「高円宮殿下記念 根付コンペティション」を2009年に創設。毎年グループ校(大阪芸術大学、大阪芸術大学短期大学部、大阪芸術大学附属大阪美術専門学校)の在学生を対象に、根付作品を募っています。
今回も多くの作品が集まり、10月18日に高円宮妃久子殿下と根付作家の和地一風氏、塚本邦彦学長をはじめ本学教員らによる厳正な審査を実施。130名141点の応募作品から、高円宮賞、学長賞など17名の入賞者が決定しました。
12月6日~22日に、あべのハルカスの大阪芸術大学スカイキャンパスで開催された記念展では、すべての応募作品とともに、高円宮家よりお借りした貴重な根付のコレクション約130点と、高円宮妃久子殿下が撮影された「旅する根付」の写真パネル約20点も展示されました。
展覧会初日の12月6日には、高円宮妃久子殿下のご臨席のもとで表彰式が開催され、高円宮賞を受賞した大阪芸術大学工芸学科4年生の玉村陽政さんをはじめ、入賞者に表彰状や記念品が贈られました。
表彰式では、妃殿下から「さすが大阪芸術大学の学生だなと思うような、想像力に富んだ作品が多く、審査は楽しかった反面、難しい決断も求められました。根付は大きさや紐通しなどの制約があることで、より面白いものを作れるのではないでしょうか。今後も新しいアイデアや技術や素材によって、根付はさらに進化していくことと思います」と、審査の総評とともに、根付の継承を期待されるお言葉が述べられました。
続く内覧会では、妃殿下が入賞者一人ひとりとお話され、作品の感想やアドバイス、励ましのお言葉をかけてくださいました。今回の応募作品は全体的に質が高く、社会情勢をテーマにしたものや、ヒノキや鹿角のような難しい素材を使用したもの、今までにない独創的なものなどが鑑賞者の目を楽しませました。
高円宮コレクションの展示コーナーでは、妃殿下自らそれぞれの根付について詳しくご説明くださり、学生たちが手に取って拝見させていただく場面も。本学を卒業後に現代根付作家として活躍する先輩の作品もあり、学生たちにとって、大きな刺激と学びを得られる機会となりました。
昨年もこの根付コンペティションに応募したのですが、良い結果が残せなかったため、今年こそはと、根付のことを一から勉強して再挑戦しました。海の守り神と言われるホヌ(ウミガメ)のイメージを饅頭根付に落とし込んで制作。ウミガメの虚像が海の底から浮き上がってくるように見せるため、内側を鏡面仕上げにしたのがポイントです。これが非常に難しく、試行錯誤を重ね、苦心の末になんとか完成することができました。今自分が持つ技術の全てを注ぎ込んだ作品で、念願の高円宮賞を受賞することができ、とても嬉しく思います。 授賞式では高円宮妃久子殿下が、一番頑張った点や見てほしい所に気づいてくださり、お褒めの言葉をいただきました。深い専門知識と素晴らしい感性で、こちらがご説明しなくとも作者の意図を汲み取ってくださることに、大変感銘を受けました。 私が大阪芸術大学の工芸学科に入学したのは、金属のアクセサリー作りに関心があったためです。授業で金属工芸の多様な技法を学び、彫金作品の制作に取り組んでいます。卒業後は工芸作家として活動し、多くの人に手に取ってもらえる作品を作っていくのが目標です。 今回、根付について研究し、授賞式で高円宮コレクションの見事な根付作品に実際にふれることもできて、根付の主な素材である象牙や鹿角、ツゲなどにも興味を持ちました。今後はそうした異素材との組み合わせにもチャレンジしてみたいと思っています。