総合芸術大学ならではの視点で、小学校や幼稚園の教諭、保育士など、子どもたちの未来を育む「先生」を育成する初等芸術教育学科。アートを通じて子どもたちに寄り添い、創造性を伸ばすプロジェクトを多数実施しており、その一つである「アートの森」が、8月11日・12日に大阪・河内長野市で行われました。
参加した学生たちにとっては、実際に子どもとふれあいながら現場での実践力を高める貴重な学びの場となりました。
「アートの森」は、前任の末延國康元教授が主宰し、現場の教員らがスタッフになって運営されている「アート活動」を行う団体です。2016年から自治体と連携して開催しているプロジェクトです。河内長野市・滝畑という自然豊かな場所で、春・夏・秋と毎回テーマを変えながらワークショップを実施。一日がかりでゆっくりと自由な制作の楽しさを子どもたちに体験してもらう催しは、毎回好評を得ています。
今回の「アートの森」は、コロナ禍による休止を経て、約2年ぶりに開催されました。地域の小学生や幼稚園・保育所などの子どもたちを中心に約25名が参加。夏休みの2日にわたって、様々な制作活動を楽しみました。
絵本の読み聞かせ後に感じたことを絵に描く、様々な技法を取り入れた色遊びや貼り絵をする、木材を使って立体作品を作るなど、工夫に富んだプログラムを用意。初等芸術教育学科の学生や卒業生が、ボランティアスタッフとして子どもたちの創作活動の支援を行いました。
学生スタッフは、子どもたちに寄り添って、一人ひとりが自由に作品づくりを楽しめるようサポート。小学校や幼稚園、保育所などの先生をめざす学生たちにとって、現場に即した豊かな経験となります。子どもたちの発想の広がりを肌で感じたり、思いがけない行動にその場で柔軟に対応したりと、様々な体験を通じて、大学の授業では得られない多くの学びを吸収していました。
この「アートの森」は、緑あふれる環境のもと、10時~16時とゆったりしたスケジュールで、のびのびと創作活動を行うワークショップです。五感で自然を感じながら、時間に追われることなく自由に自己表現を楽しむ経験は、今の小学校や幼稚園ではなかなか難しいのが現状。こうした場が、子ども一人ひとりの「好き」を伸ばしたり、人間らしさや感性を育んだりすることにつながっていけばという思いで取り組んでいます。 小学校や幼稚園、保育所、児童福祉施設などでの教育や保育は、座学による理論や知識だけでは十分に対応できません。初等芸術学科では、体験演習や体験実習などのカリキュラムに加えて、実際に子どもたちとふれあえる課外のプロジェクトや活動にも力を入れています。子どもへの声かけ、援助の方法、保護者とのコミュニケーションなど、様々なスキルを現場で身につける機会を広げています。 このワークショップでは、子どもたちに「教える」というよりも、横に並んで一緒に制作し、「ともに楽しむ」というスタンスを重視。一日かけて一緒にモノづくりを行いながら、子どもと関わりを深め、内面を理解したり、内発的なやる気を引き出したりしていきます。 他にも百貨店や商業施設から依頼を受ける産学連携プロジェクトなどがあり、学生たち自身が子どもたちに向けた催しを企画することもあります。教員や保育者をめざす学生たちにとっては、子どもとの関わり方を学ぶための貴重な体験になります。また自ら考え工夫してイベントを形にしていくことで、教育・保育にとどまらず社会で活躍するために必要な能力が磨かれます。4年間で幅広い経験をして、それぞれの将来の目標に向かってほしいですね。
今回の「アートの森」には、これまで子どもたちとの関わり方について学んできたことを振り返り、あらためて再確認するような感覚で参加しました。特に大切にしたのは、「子どもたちの言葉を否定しない」ということ。一人ひとりのやりたいことを大切に受け止め、リラックスしてのびのびと楽しんでもらえるように気を配りました。 お絵かきのプログラムでは、絵本の読み聞かせを担当。その後に感じたことを絵にしてもらうのですが、その子の発想を邪魔せず思うままに描いてもらえるようにと意識して声かけをしました。色遊びや貼り絵でも、見本の真似ではなく自分らしい遊び方ができるように工夫したり、どうしたらいいか迷っている子のヒントになる言葉をかけたりと、一人ひとりの様子を見ながらサポート。おかげで、僕の担当したグループは他のグループよりもさらに自由奔放な作品になってしまったのですが、子どもたちが楽しんでくれたという手ごたえを感じました。 卒業後は児童養護施設に就職する予定です。色々な事情で家族と暮らせない子どもたちと一緒に過ごして自立を支援していきます。ここで学んだことをいかし、子どもたちの気持ちに寄り添って後押ししたり、一緒になって楽しんだりするような存在でありたいですね。
学童保育でアルバイトをしているので、子どもと接する経験はありますが、この「アートの森」ではまた違う視点から多くの発見ができました。たとえば、子どもたちは同じ絵本の読み聞かせを聞いても、それぞれ感じ方や捉え方が大きく異なります。描いた絵を通してそれが目に見える形で理解でき、「同じように見えても一人ひとりまったく違う」と実感。またシャボン玉遊びでは、保護者の方も参加し、大人も子どもも一緒になってきらきら光るシャボン玉を楽しむ様子を見て、「美しい」や「楽しい」を共有する素晴らしさを感じました。 子どもへの理解や対応力を高めるには、知識も必要ですが、やはり現場経験や慣れが大切だと思います。初等芸術教育学科では、現場に出られる機会が多く、2年次後期には幼稚園や小学校などでのインターンシップのような授業もあります。「アートの森」のような学外イベントにも積極的に参加して、子どもたちと一緒に様々な体験をしながら自分も成長したいですね。 高校までピアノや吹奏楽に打ち込み、写真を撮るのが趣味の僕にとって、総合芸術大学で他学科の友人から色々な刺激を受けられるのも大きな魅力です。少人数制の初等芸術教育学科で、アットホームな中身の濃い授業を受けながら、学科を超えた幅広い交流も楽しんでいきたいです。
「アートの森」は、私が初等芸術教育学科に入学したきっかけの一つ。保育士をめざして大学選びに悩んでいた時、この催しのことを知り、興味を持ったのです。今回スタッフを務めてみて、予想以上に楽しく、とても良い経験になりました。街育ちの私は、大自然の中で造形活動をすること自体が初体験。もし子ども時代にこんなイベントがあれば、ぜひ参加したかったです。 子どもたちの中には、他のことに気をとられて作業に集中できなかったり、なかなか手が進まなかったりする子も。できるだけ自由に楽しんでほしいと思う一方で、保護者の方からは「絵が上手になってほしい」という気持ちが伝わってきて、サポートの難しさを感じました。その子に合った援助をしながら、自由な制作が楽しめるよう働きかけて、子どもたちの発想や個性を伸ばすにはどうしたらいいか、もっと勉強したいという気持ちが高まりました。 今は保育士と幼稚園教諭の資格取得に向けて頑張っています。芸術療法や、子どもたちに美術や音楽の楽しさを伝えるなど、初等芸術教育学科ならではの学びはとても自分に合っていて楽しいですね。大学は、色々なアートの展示があったり音楽が聴こえてきたり、キャンパスを探検するだけで芸術にふれられる豊かな環境。毎日ワクワクしながら過ごしています。