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アート・展覧会 芸術活動 学生・卒業生

金理有個展「工芸ディアスポラ」

2024.01.24

【期間】

2024年1月17日(水) → 29日(月)


【会場】

大阪髙島屋 6階ギャラリーNEXT

詳細はコチラ


私は、「日本の作家である」と名乗れても、「日本人の作家である」とは名乗れない、と言う葛藤に常に苛まれています。
それは私が韓国名、韓国籍を持つ反面、日本で生まれ、日本人である父親の血も半分受け継いでいるという複雑なアイデンティティによるものです。
2000年頃に起こった韓流ブームは同時に一部の尖鋭的な反韓言説も浮き彫りにしましたが、それでもなお、韓国名を持つと言うだけで差別されるような、私が幼少期〜思春期を過ごした日本の状況はかなり寛容なものへと改善されました。
同じように、私が偶然学び始めた「工芸」と言う領域は、明治期の開国や戦後のより一層の西洋文化の流入によって形成されたヒエラルキーにより応用芸術となされ、コンプレックスや自負心、羨望と反感を併せ持つような複雑なアイデンティティに向き合おうとする意識を醸成させて来ました。
分類という行為はある部分を際立たせる反面で、その中間にある緩やかな繋がりを見えづらくします。
その曖昧で、しかし確かに存在するグラデーションを可視化する一つの座標としての立場を表明したい。そんな想いで私は、彫刻とうつわの「間」を往来します。

金理有 プロフィール

金理有氏は2006年に大阪芸術大学大学院芸術制作研究科修士課程を修了後、2011年横浜トリエンナーレへの出品をはじめ、数々の個展やグループ展で活躍する気鋭の作家です。
SFや音楽、ストリートカルチャーなどの要素と縄文土器や神話的世界観が融合した作品や、現代の茶席を自らの世界観で再構築した茶道具を発表するなど、ジャンルの枠を越えた制作で注目を集めています。
グローバリゼーションにより、人、モノ、情報、資本が国境を越え、地球規模の移動が常態化する現代。故地から離散した状態、いわゆるディアスポラとされる人々の定義は、今日の社会理論の中で、より広義な意味合いを持つようになりました。
金理有氏は、韓国と日本という複雑なアイデンティティを併せ持つ自らと、「美術」と「工業」の間の領域として曖昧な指標のもとに形成されてきた「工芸」の概念をディアスポラというキーワードで重ね合わせます。国境や人種、機能性とオブジェなど、いかなる分類にも存在する境界線。そのおぼろげな分界に陶芸家として身を投じ、独自の美意識によるハイブリッドな創造を体現し続けています。
今展では、信楽の土の神秘性を引き出し、砂の彫刻を想起させるかのような無釉の白い作品や、金属を思わせる色味を纏った一つ目のオブジェ、掌中に宇宙を感じさせる茶碗などの新作を一堂に展観いたします。