その独創的なアイデアは、どこから?大阪芸術大学 アートサイエンス学科新校舎について、建築家の妹島和世氏に話を聞いた。
今回大切にしたことは、大きく3つ挙げられます。
第1のポイントは外観の印象。丘の上の立地で、坂を上ってくると最初に目に入る建物になるので、建物が主張しすぎないように丘と一体化させ、環境と調和させたいと考えました。「土地に合わせてここをカーブさせよう」と試行錯誤しているうちに、自然と有機的なフォルムになっていきました。
第2のポイントは、建物が“開かれている”こと。内と外との自然なつながりを重視して、いろんな方向から出入りできて、内側からはさまざまな方向に外の風景が見えるように工夫しました。
第3のポイントは、交流の場になること。アートサイエンス学科以外の学生も気軽に立ち寄れて、新しい出会いが生まれる空間になることをめざしています。
公共施設でも住宅でも、私が理想とするのは、「公園」のような建物。公園は、遊ぶ子ども、語らうカップル、お弁当を食べるサラリーマン、本を読む高齢者などいろんな人が、他者の気配や自然を感じながらも自由にくつろげる、開かれた空間。建物であっても、つねに視線の先に緑や人の動きがあり、それが心地よく感じられる空間にしたい。
「公園のような建物を」という願いが、この新校舎にも少なからず反映されていると思います。
●妹島和世(せじま かずよ) 1956年茨城県生まれ。建築家。日本女子大学大学院修了後、伊東豊雄建築設計事務所に入所。1987年妹島和世建築設計事務所を設立。1995年に西沢立衛氏とSANAAを設立し、共同設計を開始。ベネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞、アーノルド・ブルンナー記念建築賞など国際的な賞を多数受賞。2010年には建築界のノーベル賞と称されるプリツカー賞を西沢立衛氏と共に受賞。横浜国立大学大学院Y-GSA教授、大阪芸術大学客員教授、ミラノ工科大学教授、日本女子大学客員教授。