2013年にスタートし、今や冬の大阪を代表する恒例行事として定着している「大阪光の饗宴」。芸術計画学科では、そのコアプログラムである「OSAKA光のルネサンス」に2017年から参加し、中之島のバラ園で独創的なオブジェの展示プログラムを展開してきました。2021年は会場を大阪市中央公会堂前の広場に移し、開催されました。会場の変更に伴いレギュレーションやマニュアルも大幅に変わる中、1〜3年生の学生、教授が幻想的なオブジェの設営に取り組みました。
2020年は新型コロナウイルスの蔓延を鑑みて展示プログラムが中止に。しかし、学生がデザインした作品「希求の唄」のテーマである“医療従事者への感謝”という思いや、製作に傾けた情熱は1年を経ても色褪せることはありません。2021年は、そこに“明るい未来へ繋がるように”という願いも込めて「希求の唄 Vol.2 〜with corona コロナ禍の中で」と題し、改めて展示のメインに登場。全長25メートルの巨大な白鯨が大阪市中央公会堂前で泳ぐ姿に、来場者も足を止めて見入っていました。
例年、展示を行っているバラ園から場所が移るという状況の中、運営を行う学生たちも新たなレギュレーションに則りながら現場での段取りを進めていきます。今回は、新たに加わった井上茂樹先生の指導の元、初めて現場で墨出しによる測定が行われ、詳細な数値を割り出して展示の精度を高めるというスキルの獲得に繋がりました。
設置作業の中で最初の難関となったのは、ベースがバラ園の芝生からアスファルトに変わり、作品を固定するためのペグが打てなくなったこと。巨大な作品とはいえバルーン状の造形物であることから、風で飛ばされないための措置は必須。今回は、作品内に大量のウェイトを配置することで対応し、親クジラの頭部だけでも、なんと約240kg分が使用されました。
大阪市中央公会堂を背景にオブジェを設置するということもあり、来場者にどのように作品が見られるかということが例年以上に配慮された今回の展示。設営時には事前の墨出しを踏まえ、村上学科長の監修のもと、数センチ単位の微調整が行われました。2年生にとっては初めての現場だったにもかかわらず臨機応変な動きを見せたことで、想定していたイメージどおりの展示を形にすることができました。
いよいよ迎えた本番当日。夕闇落ちる中之島で2頭の親子クジラは遠目にも分かるほど幻想的な光を放ち、道行く人々もその美しさに見入っています。今回はスペースに制限があるため、すべての作品を展示することができず、「希求の唄」の他には、天に向けて揺らめく巨大なエアチューブと、新たに制作された円錐や四角錐などのオブジェが設置されました。しかし、作品点数を減らしたことによって「希求の唄」が際立ち、作品に込められた思いをありありと伝えるコンセプチュアルな空間が誕生。背後にそびえる大阪市中央公会堂との相乗効果で、カメラにその景色を収める光景が多々見受けられました。
「希求の唄」を人々に伝えるという前回のリベンジを果たした学生たちは、感慨もひとしお。イレギュラーづくしな状況の中で進められた設営準備の中、展示を成功に導いた学生たちの実績は、よりクオリティを高めたマニュアルとともに次回開催へと紡がれることでしょう。
前回は新型コロナウイルスで展示ができなかったことに加え、作品の破損が見つかるなど、さまざまな課題を残したのですが、それをすべてクリアして開催にたどり着くことができました。会場が変わったことで事前に墨出しを行うなど、新しいトライアルも学生たちの糧になったのでは。ただ、やはりすべての作品を展示したいという思いはあるので、できれば次回はバラ園に戻りたいですね。 開催準備が例年より大幅に短縮されるなど、いろいろ大変な状況の中でしたが、学生たちは3年生を中心に団結し、2年生も的確なオペレーションを行うなど、しっかりやってくれたと思います。マニュアルについても疑問を感じる部分はすべて作り直すよう指導し、非常にクオリティの高いものができました。 今後の課題は、特に2年生は、なにかしらの指針を示さないと計画を出せないというのが分かったこと。音響や照明の方向性がなかなか決まらなかったのですが、ぎりぎりになっても、まだ余裕を持ってやれると思ってしまう。スケジュール全体を通して時間を読んでスケールすることは非常に難しいのですが、今回はそれが身に沁みて分かったのではないかと思います。 僕らでもこれだけイベント運営に携わってきて、同じものが繰り返されたことは1回もありません。たとえタイトルが同じでも内容や出演者に変化が生じるから、常に想像力は働かせなければいけない。今回、中心になった2年生は、3年生になるまでにそのことを覚えてくれたらと思います。
今回、2年生のチーフとして、全体統括や現場での指示出しなどを担当しました。前回も本当はスタッフとして参加するはずだったのですが、新型コロナウイルスの感染拡大で展示が中止になり、ギャラリーとして撮影用の設置を見学していました。そのため現場経験がない中、手探りでの運営となり、現場でもドキドキしながら毎日を過ごしていました。 準備段階で苦労したのは備品の調整。みんなでこのオブジェを完成させるには、何が必要なのか、誰に何を持たせるのか。運営の学生にネックライトや反射タスキをつけるように伝えたり、何があれば当日、スムーズに進むのかなどを考えるのが大変でした。 バラ園での展示と異なり「希求の唄」の背景に大阪市中央公会堂が入るということで、これまでとは違った見せ方ができたので、来場者の方々には、それをふまえて写真撮影なども楽しんでもらえたのではないかと思います。
今回、3年生のチーフを務めました。前回は、新型コロナウイルスのため1日しか展示できず、撮影後すぐに撤収。その時に作品が破損してしまい、修理も大変でした。今回、改めて「希求の唄」を展示するということで、準備日に初めてこの場所でクジラが泳ぐ姿を見たときは感動しました。 会場がバラ園から変わるということで最初は戸惑いましたし、現地を下見したときも最初は正直、狭いなという印象でした。大阪市中央公会堂が背景に入ることをイメージしたり、周辺に別のオブジェがあることを考えると配置も難しかったのですが、実際にオブジェを立てると、とても素晴らしい空間ができ上がったと思います。 2021年は、学生一人につき3つのプロジェクトを同時進行するという学科の方針があったので、チームメンバー全員で打ち合わせする時間がなかなか取れなかったのが大変でした。2年生は仕事量も多い中、資料作りや墨出しの測定など、細かいところまで頑張ってくれたと思います。今回は備品の申請手順やマニュアルの内容がかなりブラッシュアップされているので、これは今の2年生が次に参加する後輩に伝えていってほしいですね。私自身もここで学んだことは今後、社会に出た時に存分に生かせるだろうなと思いました。