「早くプロとして活動したい」という焦りも
大阪芸大の授業は実践的でした。演技、舞台の基本をある程度やったら、すぐに台本を渡され、あとは“制作、稽古、本番”の繰り返し。年に1回、シアター・ドラマシティ(梅田芸術劇場)で公演もあり、舞台に立つ機会も多く与えてもらえました。
学園祭で自主的にミュージカルを上演したこともあります。「やるぞ!」と声を上げたら、すぐに「やりたい!」という学生たちが集まって。自由な校風で、「表現したい」という意欲にあふれた学生が多かったですね。
一方で「早くプロとしてスタートを切りたい。卒業までは待てない」という焦りもありました。バイトをしながら劇団を運営している先輩が多かったのですが、僕は生意気にも「それでは演劇が趣味のフリーター。芝居だけで生活できないとプロとは言えない」と思っていたので。
実際、2年生の途中で大学を辞め、東京の劇団に所属する決断をしました。今思えば、もったいなかった。今から大学に戻って学びたい授業が山程あります(笑)。ただ、「現状に甘んじてはいけない」と思うと、すぐに次の場所に向かって動き出すのは、今も同じかもしれないですね。
●新納慎也(にいろ しんや)1975年生まれ、神戸市出身。大阪芸術大学舞台芸術学科に入学、2年生修了後に自主退学し上京。蜷川幸雄、森新太郎、宮本亜門、宮田慶子作品舞台に数多く出演。NHK大河ドラマ『真田丸』豊臣秀次役では悲劇の死の演技で『秀次ロス』現象を巻き起こす。来年は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」への出演が決定し話題となっている。