Topics
写真家・ホンマタカシがひとつの建築に魅入られた。
その眼が見つめたもの、そして表現したものとはー。
2018年11月27日に竣工した大阪芸術大学30号館、アートサイエンス学科の新校舎。プリツカー賞を受賞した建築家・妹島和世によるこの建築の、設計段階から完成までを、写真家・ホンマタカシは2015年から追い続け、一編の映像詩にまとめた。
「建築と時間と妹島和世 Organically Landscape in progress」と名付けられた、そのドキュメント映像には、淡々とした時間が流れている。しかしその映像のなかで実際に起きていることは、実はとてつもなく大きく、ダイナミックなクリエイティブだ。
ホンマタカシは、ル・コルビジェや丹下健三など過去の建築家たちもふくめ、さまざまな建築の撮影をしてきた。
彼は、なぜ、建築に惹かれるのか? また、妹島和世建築とは、どのような存在、対象なのだろうか。その本音に迫ってみた。
「もともと都市と郊外に興味があって、写真撮影してきました。その中で、必然的に建築に興味を持ちました。妹島さんの建築とは90年代後半に出合いました、それ以来ずっと撮影してきています。妹島さんの建築も、最初、透明とか軽いと言ったキーワードで語られていました。僕の写真の質感に合ったんですね。建築と言っても、コンクリート打ちっ放しとか、重い建築は僕の写真に合わないんです」
建築を撮る、ということについて
「あらためて、時間というもの、現実の時間と、映像の中の時間という意味でも、自分でも発見があったと思います。大学の固定の定点カメラの映像も使っていますが、僕が選んで撮影した個々のショットも、言ってみればその2年3年の時間の中で、同じ場所の定点なわけで、それは入れ子構造になっていると思います。妹島さんの時間をかけたポートレイトとも言えると思います」
2016年9月4日~2019年8月31日まで。1091日、撮影をしたことについて
「映像を撮るときと、写真を撮るときに、それほど意識の違いはありません、むしろ同じ意識で撮るようにしているのかもしれません」映像と写真。それぞれを撮るときの、意識の違いについて「2年、3年のスパンが一つの建築の計画にはあって、それを時間をかけて撮影するというのは、自分にとっても貴重な体験になったと思います」「また模型と定点撮影というのは、もうすごく僕にとっては重要なものです」
模型~工事~施工まで。建築物がつくられていく過程を追うという行為について
「観る人にたいしては、芸術大学の学生たるもの、紹介やガイドをなぞるのではなく、自分で感じて考えてもらいたいと思います。いつか、この映画で感じたことや、思いを、お互い対等な場で、討論できたらと思っています」
この映画を観る、大阪芸術大学の学生たちについて
●ホンマタカシ 1962年東京都生まれ。写真家。1991~1992年にかけてロンドンに滞在し、若者向けファッション・カルチャー誌『i-D』で活躍する。帰国後は、雑誌、広告などで活躍する傍ら、波、郊外風景、空撮、東京の子供、建築物など幅広いジャンルを被写体に撮影を続けている。1999年、写真集『東京郊外 TOKYO SUBURBIA』(光琳社出版)で第24回木村伊兵衛写真賞受賞。映画監督としてもドキュメンタリーを中心に数々の作品を残している。
これまでホンマタカシが撮影してきた妹島建築。90年代後半から、国内外のさまざまな作品を追いかけてきた。