独自の色使いとなめらかな線で“ポップなホラー”の世界観をつくり上げる瀬兎一也氏。大阪芸術大学短期大学部在学中、イラストのメイキング動画が人気に。卒業後はゲームメーカーで働きながら作品発表を続け、2021年現在、YouTubeチャンネル登録者数は5.6万人に達している。そんな瀬兎氏に、SNSの活用術について聞いた。
Text: Takashi Watanabe
「中学時代にニコニコ動画やYouTubeの視聴にはまり、ほどなく発信側に憧れるようになりました。SNSを始めたのは高校入学後。自分のスマホとPCを手に入れるとすぐに、YouTubeとTwitterのアカウントを作って発信し始めました。自作のイラストを組み合わせた映像を使った“歌ってみた”動画をYouTubeへアップロードしていきました。子どもの頃からイラストを描き続けていて、漠然と歌い手への憧れもあったことから、『イラスト+歌』の動画制作は自然な流れでした。Twitterは、基本的にその動画の宣伝として使い、たまにイラストを投稿することもありました」
「イラストのメイキング動画を発表し始めてから増えていったように思います。もともと自分としては歌のカバー動画をつくっているつもりでしたが、友人から『イラストを描けるならメイキングをそのまま動画にして、BGMとして歌を載せたら?』とアドバイスを受けました。試しに投稿したところ、イラストへの関心が高い方に視聴してもらえるようになり、反響も次第に大きくなっていきました。イラストの絵柄と名前を知ってもらえるようになってきて、絵を描く職業に就くのも面白いかも、と真剣に考えるようになりました」
「自分自身をブランディングするツールです。実際、クライアントが作品を最初に見るのはYouTubeやTwitterを通じての場合がほとんど。YouTubeやTwitter経由でお仕事をいただくことも多く、投稿作品は決して手を抜けないと感じています。また、作品への評価を知るツールでもあります。コメント欄は貴重な情報源です」
「誰も傷つけないこと。YouTubeは投稿までに動画編集の作業が必要なので、その過程で情報をあらためて吟味して取捨選択ができます。一方、Twitterなどすぐに投稿できるアプリでは、投稿する前に意識的に一旦立ち止まって自分の感情が入った情報になっていないかをチェックします。特にネガティブな意見は控え、誰かを傷つけてしまうことにならないように注意しています」
「マルチタスクが苦手なタイプなので、YouTubeとTwitterの更新だけで手一杯になっています。けれど、いろんなSNSアプリを駆使すれば、自分の作品をより多くの方に届けることができるのは間違いない。今後は他のアプリも取り入れて、より広く情報発信できるようにチャレンジしていきたいです」
「尊敬するイラストレーター・望月けいさんの出身校である大阪芸術短期大学部を選びました。アートやデザインに関する授業が多彩に用意されていたのが決め手です。専攻を決める前に様々なコースの授業を体験的に受ける中で、イラストについてはそれまでのように独学を続け、学業としては今後の創作活動に役立ちそうなグラフィックデザインを専攻することにしました。アートは自分の作品を届ける自己表現。デザインはクライアントの要望に応える課題解決。似て非なるアートとデザインを実践の中で学べたこと体験が、その後の創作活動の土台になりました」
●瀬兎一也(せと かずや)
大阪芸術大学短期大学部 デザイン美術学科 グラフィックデザイン・イラストレーションコース卒業。ゲーム会社でグラフィッカーとして働きつつ、イラストレーターとしての活動のほか、動画投稿も行うマルチクリエイター系YouTuber。YouTubeでは主にイラストの講座動画、歌のカバー動画を投稿しており、総再生回数は560万回を超える。
※現在一部動画が非公開です。